注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
2016年7月15日より、レポート提出のルールを変えています。学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。
また、未完成者が完成者より得をするモラルハザードを防ぐために、完成原稿に問題があってもあえて修正・再提出を求めていません。レポート内には構造的に間違いが散在します。学生のレポートの質はこれまでよりもずっと落ちています。そのため、岩田が問題点に言及した「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
SSIのリスクマネジメントによりどれほどリスクを減らせるか?
SSI(surgical site infection)とは米国のCDC(米国疾病予防センター)により手術後30日以内に手術操作の直接及ぶ部位に発生する感染と定義される。SSIは最も一般的な院内感染であり、院内感染の38%を占めるとされる(1)。そこでSSIの発症を防ぐことが医療現場の課題であると考え、SSIのリスクマネジメントによりどれほどのリスクを減らせるのか考察してみることとした。
著書やUP TO DATE、PUBMEDなどで参考となる文献を検索したが、リスク管理を包括的に行うことに焦点をあてその場合に、SSI発症数(確率)がどのくらい減少したかを示す文献が見つからず、包括的にリスクマネジメントを行った際の検証が難しいと考えた。そこで周術期に限定したリスクマネジメントによる文献を見つけることができたので、周術期に限定して考察を試みた。
WHOは2009年に手術安全チェックリストを発表した。手術安全リストは19の項目からなり、3つの重要な周術期(誘導時、切開時、患者が手術室を離れる前)に使用される。 項目には、安全な麻酔の送達、抗生物質の予防的投与などが含まれる。
J.Bergsらは2013年までにWHOの手術安全チェックリストがSSIのリスクを減少させるかシステムレビューによる評価を行った。(1)特定の検索ベース(2)にて検索を行い、術後合併症についてデータを抽出しSSIに対するWHO の手術安全リストの効果を定量化するためにメタ分析を行った。SSIに関して報告された論文は6つ(3-8)であった。そのうち3つの論文ではSSI発生率が明らかに減少したとされた。(3):6.2%から3.2%へ減少 (p<0.001)(4)11.2%から6.6%へ減少(p<0.001)(5)14.9%から4.7%(p<0.001)という結果が得られた。しかし、他の3つの論文では多少のSSI発生率の減少は見られたが統計学的に有意差はなかった。また、メタ分析の結果、リスク比は0.57(95%i.c 0.41-0.79)であった。
以上からWHOの手術安全チェックリストを用いたリスクマネジメントではSSIの発症を減少させることができる。またそのリスク比は0.57である。
Reference
- Bergs J, Hellings et el Systematic review and meta-analysis of the effect of the World Health Organization surgical safety checklist on postoperative complications
- The Cochrane Library, MEDLINE, Embase and CINAHL(culative Index to Nursing and health literature)
3)Haynes AB, et al. A surgical safety checklist to reduce morbidity and mortality in a global population. N Engl J Med 2009; 360: 491–499.
4)Weiser TG, et al;. Effect of a 19-item surgical safety checklist during urgent operations in a global patient population. Ann Surg 2010; 251: 976–980
5) Kwok AC et al. Implementation of the World Health Organization surgical safety checklist, including introduction of pulse oximetry, in a resource-limited setting. Ann Surg 2012; 257: 633–639.
6) Sewell M,et al. Use of the WHO surgical safety checklist in trauma and orthopaedic patients. Int Orthop 2011; 35: 897–901.
7) Askarian M, et al. Effect of surgical safety checklists on postoperative morbidity and mortality rates, Shiraz, Faghihy Hospital, a 1-year study. Qual Manag Health Care 2011; 20: 293–297.
8) Bliss LA et al. Thirty-day outcomes support implementation of a surgical safety checklist. J Am Coll Surg 2012; 215: 766–776.
寸評:まあ、端的に言えば未完成作です。しかし、4月ですからこんなものでしょう。テーマ設定は大事ですね。ご精進ください。
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