D「研修医の問題は、すぐ直したほうがよいものと、すぐには直さないほうがよいものがある」
S「そうなんですか」
D「前にも言ったろ。研修医を教えるのは、優れた研修医を育てることではなく、優れた指導医を育てることにある、と」
S「そうでした」
D「優れた指導医って何歳くらいまでになればいいんだろ」
S「え???さあ、30代中盤?」
D「まあ、そうかもしれんが、その後劣化していったら元も子もないだろ。40、50代で劣化して使い物にならなくなる指導医のなんと多いことか」
S「ああああ、VXガスが振ってくるよう」
D「というわけで、何歳でしっかりした指導医になるべきか。明確な基準はない。早熟な20代もいるだろうし、50代くらいで大化けする指導医もいる(見たことある)」
S「言われてみれば、そうですね」
D「最終的に、その人物が優れた指導医になればいいんだ。早熟な医者は、足を引っ張るな。やりたいようにやらせてやれ、伸びる人間の邪魔をするな」
S「はい」
D「大器晩成型の医者は、焦るな。焦らせたら、逆効果だ。ゆっくり待つのが大切だ。そうすれば、いつか芽が出ることもある」
S「保証はないんですか?」
D「あるもんか。人間のことだからな。必ず上手くいくなんてナイーブにすぎる。しかし、たとえ芽が出ないにしても、芽が出やすい戦略を取る以外に選択肢はない。教育は情熱とか思い入れ(あるいは思い込み)でやるものではない。少なくとも、情熱と思い入れと思い込みだけでは、だめだ。勝てる可能性の高い選択肢をクールに取る。そういう戦略性が重要だ」
S「なるほどお」
D「要するにC先生の問題は、シャイなキャラからくる問題だ。シャイな人物を「シャイになるな」と言って、できるわけがない。一般に、「キャラの問題」は待つのが大事なんだ」
S「そうなんですか」
D「ま、俺様の経験上、シャイなキャラはいつか、ある日、突然解決することが多い。自分で変わろうと思った時以外にキャラというのは変わらないんだ」
S「D先生も、キャラ変えられないんですか」
D「なんか、言ったか?」
第88回「わざと見逃す欠点もある」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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