D「いいか、患者を診たときにまず考えるべきは「この患者にはいったい何が起こってるのかな?」ということだ。「なぜ」患者に熱があるのか。「なぜ」検査に異常所見があるのか。「なぜ」身体診察で異常所見があるのか?この「なぜ」に答えるのが大切だ」
S「そうですね」
D「そこで、間違いやすいのが、「鑑別疾患リスト」づくりだ。もちろん、リストを作るのが悪いんじゃない。しかし、ただ病名を並べて「リストを作るだけ」では、「患者に何が起きているのか?」というオリジナルな問いの答えになってない」
S「まあ、、、そうですが、、、」
D「では、その問いの答えはどうあるべきだと思う?」
S「うーーん、「心筋梗塞」みたいに鑑別を一つに絞るってことですか?」
D「最悪の回答だ!それじゃ、外れたときに総崩れじゃないか。そんな、バクチみたいな医療を研修医にさせてはならない」
S「ええ~~、じゃ、どうすればいいんですか?」
D「あのな、ダメなタイプのカルテにはこう書いてある。
心筋梗塞除外
肺塞栓除外
食道スパスム除外
逆流性食道炎除外
胸膜炎除外
帯状疱疹除外
云々」
S「まあ、よく見ますね」
D「この、「なんとか除外」がそもそもよくない。これだと、順番に検査の絨毯攻撃になり、患者はしんどいし、医療費はかさむし、おそらく検査の偽陽性で主治医は大混乱に陥る」
S「あああ、まあ、そういうのはよくある話ですが、、、」
D「そして、このようなリストは研修医が「何も考えず、ただ思いついた病気を五月雨式にリストアップして検査漬けにしている」ことを意味している。リストからは、研修医が患者をどう考えているのか、全然イメージできない」
S「ああ~確かに」
D「研修医は患者が心筋梗塞だと思ってるのか?思ってるのだとしたら、どのくらい?100%か?70%か?五分五分か?3割位か?あるいは1%程度だけど、除外は難しいのか?」
S「なるほど。「程度の問題」を記載してないから、いけないんですね」
D「そのとおり。「可能性はあるか?」の答えはほとんどイエスだ。臨床現場においては。問題は、その可能性がどのくらいあるか?だ。可能性がほとんどない鑑別疾患のワークアップは優先度が低いか、あるいは必要ない。そういう重み付けが「考える」ということなんだ」
S「なるほど~」
第78回「可能性を量化させよう」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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