S「ふー、回診終わり。今日も疲れたな~」
D「後ろで見てたよ。なんか、またヘンテコなことやってたな」
S「どこに隠れてたんですか?全然気配を感じませんでしたけど」
D「忍びの心得があるんだよ、俺は」
S「どこで習ったんですか?ところで、なにがヘンテコだったんですか?」
D「あのさ、患者をベッドサイドで診察するじゃん、その後部屋から出るじゃん」
S「はい」
D「で、部屋から出てから廊下であれやこれや研修医や学生に教えてただろ」
S「ええ」
D「なぜだ?」
S「なぜって、、、普通そうしませんか?」
D「だから聞いてるんだよ。「普通そうする」は「何故そうするのか?」という質問の答えになってないだろ。そうやって、さしたる根拠もないのに「こうなってるからこうなってる」みたいなトートロジーを許容するから、能率が悪くて無駄ばかりの国立大学病院みたいになるんだ」
S「あー、そこそこ、またヘンテコなマジック・リアリズムもどきをやらないように」
D「質問に答えろ。なぜベッドサイドで診察し、廊下でティーチングするんだ?」
S「やっぱ、患者さんに聞かれないためでしょうか」
D「では、なぜ聞かれたくないんだ?」
S「なんというか、、、まず研修医や学生が教わってるところを見せるのは、彼らのプライドに影響しませんか?」
D「あいつらにプライドなんて立派なものを持つ資格あるわけないだろ」
S「ありますよ、プライド、ありますよ、プライド持つ資格」
D「ないわ~~~研修医のうちは、自分はサブヒューマン、人間以下のノミみたいな存在だ、くらい自己卑下に陥ってなきゃ、自信過剰なんだよ」
S「またそんな恐ろしいことを」
D「もともと、患者の方だって学生や研修医が何者かくらい承知している。ベッドサイドで教えを乞おうが乞うまいが、彼らの立場が改善するわけではない」
S「まあ、そうかもしれませんが」
第73回「患者の前で教えよう」その1 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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