D「ん?なんだ?なんかアセった顔をしているな」
S「ちょっと、研修医を叱りすぎちゃったものですから。最近の研修医はヘコミやすいですし、しばしば逆恨みもしやすいですからね。へんにこじれる前に、修正しとこうと思って」
D「やめとけ」
S「え?」
D「止めといたほうがいい。
S「どうしてですか。フォローしとかないとあとで人間関係が面倒くさくなると厄介ですよ。下手するとパワハラ委員会とかにチクられる可能性だってあるんですよ」
D「ま、そうかもしれないが、いちいち研修医叱ってる度にフォローに走るなんて、指導医としては面目丸つぶれじゃないか」
S「面目よりもパワハラ委員会ですよ。いつも形式よりも実質を重んじるD先生らしくないですね」
D「そうじゃあない。S先生が研修医を叱り、その後すぐにフォローする。これが習慣化されてみろ。研修医は必ずそれを学習する。あいつら、「傾向と対策」をやらせれば非常に有能なんだ」
S「ああ、まあそうかもしれませんね」
D「すべての教育手法はいずれマンネリ化する。「叱って、すぐにフォロー」の戦略もすぐに傾向を分析され、対策をとられ、そして「叱る」行為の意味そのものが鈍化してしまう。長期的にはとらないほうがよい作戦だ。そもそも、すぐにフォローするくらいなら、最初から叱らなかったらよかったんだ」
S「え~~~、でも~~~」
D「あのな、叱るというのは重たい作業だ。叱られる側にとっても、叱る側にとっても重圧のかかる辛い営為なんだよ。だから、気軽に叱りたくはないし、気軽に叱るべきでもない。毎日、ストレス発散のために八つ当たり的に研修医を叱り飛ばすような鈍感、無神経、単細胞、ダイナソーな指導医など、論外だ」
S「そこまで言わんでも、、、、」
D「というわけで、研修医を叱り飛ばすのは非日常的な非常手段に限定すべきだ。毎日やることじゃあ、ない。しかし、やったからには最後まできちっと完遂しろ。叱っておいて、あとでなだめてしまうくらいなら、最初から叱らなきゃよかったんだ」
S「え~そうですか~、なんか騙されているような」
D「あほ、これまで俺がお前を騙したことがあるか?」
S「いつも騙されているような、、」
第65回「第三者にフォローさせよう」その1 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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