D「ハリソンを俺がすすめるのは、そういう非典型例に対してちゃんと配慮がなされている点だ。項部硬直がない髄膜炎もあるってちゃんと明記してある。だから、生身の患者さんに使える。俺がオーセンティックな教科書を読めというのは、そのためだ」
S「そして、オーセンティックな教科書のほとんどは英語でできている。少なくとも最新版はそうだ」
D「そのとおり。だから英語力は必須なんだよ」
S「まあ、でもオーセンティックな教科書って分厚いし、敷居が高い印象ですよね。いや、ぼくは読んでますよ、ぼくは。でも、たいていの医者は敬遠しちゃうんじゃないかなあ。それに、最近はUpToDateみたいなエビデンス・ベイスドなツールのほうが新しいっていうじゃないですか」
D「それは半分本当で、半分はそうではない」
S「と、いいますと?」
D「確かに、オーセンティックな教科書は分厚い。頭からお尻まで普通に読破するのは極めて困難だ(けど、俺はハリソンを3回読破した医者を知っている。イラク人だったが、他に読む本がなかったらしい。すごい賢かった)。けれども、実際に臨床現場で読むところはほんの少しだ。3行とか、4行くらいだけ読むのが普通じゃないかな、自分の疑問に答えてくれるところだけ読みたいんだから」
S「まあ、そうかもしれませんね」
D「そうすると、大切なのは目指す部位が素早く探せる能力ってことになる」
S「ええ」
D「では、どうやったら素早く読みたいところを見つけるようになれるかな?」
S「そ、それは、、、、たくさん開いて読むことでしょうか」
D「その通り。習うより慣れろ。たくさん使ってるうちに、見つけたい部位はすぐ見つかるようになる」
S「はい」
D「俺はハリソンを紙バージョン、kindleバージョン、両方使ってるけど、まあ、どちらも一長一短だ。トポロジー的に場所に当たりをつけて読みたいときは紙のほうが便利だ。けれども、検索ワードが分かっている場合はkindleのほうが圧倒的に速い。両方使いこなすのが一番だな」
S「両方持ってるのはちょっと変態ですけどね」
D「なんか言ったか?あと、UpToDateなんかも悪くないんだけど、病気全体の大雑把なところとかはむしろオーセンティックな教科書のほうが理解しやすいところも多いと俺は思う。最新のエビデンスなんかはUpToDateはいいけど、そういうのは主に治療面であって、診断面ではあまり急速に新しくならないし」
S「うーん」
D「まあ、その実、俺もUpToDateもDynaMed plusも使ってるけどね。要するにいろいろなシチュエーションに応じていろいろ使いこなすのがよいってことかな」
S「やんわり、自慢してますね」
D「こんなもん、自慢ちゃうわ。当然や」
S「突然、気持ち悪い関西弁使うのは止めてください。ま、明日からハリソン、読みますよ」
D「明日と言わず、今日からやれ〜」
第40回「オーセンティックな教科書を使わせよう」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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