D「いつものカンファは日本語でやってるだろう」
S「もちろんです」
D「では、なぜ外国の実習生が来ているときにも日本語でカンファをするんだ?」
S「ちゃんと、通訳を付けてました。英語の得意なA先生が逐次、訳していました」
D「それではカンファのダイナミズムが崩れてしまう。みんなが英語で発言することによって、カンファレンスにダイナミズムが生まれ、そして実習生たちも発言しやすくなるじゃないか」
S「みんな、そんなに英語力ないので、よけいダイナミズム失われると思いますが」
D「やらないから、できない。できないから、やらない。どっちだと思う?」
S「うーん、卵鶏問題ですか?」
D「まあ、どっちだっていい。分かっていることはやらないかぎり、できるようにはならない、というシンプルな事実だ。君はタイやインドネシアの回診を見学したことがあるかね」
S「いえ、まだないです」
D「彼らはぼくらが見学に行ったときはきちんと英語でカンファをするよ。まあ、率直に言ってタイ人はアジアの中では英語力が抜群なわけではない。タイ語は普及度が高いからな。マレーシア、香港、シンガポールなんかに比べれば英語力はそう高くはない」
S「なるほど」
D「そう高くはないが、日本のそれとは比べ物にならないくらい、高い。そして我々が見学に行ったときはつたないながらも一所懸命英語でプレゼンし、議論しようと努力している。それが大事なんだ。日本の医学生や医者は最初からその努力を放棄してるじゃないか。恥ずかしくないのか?」
S「うーん、そう言われれば」
D「恥ずかしいぞ。それで、病院内ではナイスでイケメンで爽やかで名門大学出の優秀な指導医ぶって偉そうにしていて、対外的には英語のカンファレンス一つ開けないんだからな。見下げたもんだよ」
S「ひーん。ここまでこき下ろされるなんて。しかも性格悪くて、見た目も悪くて、雰囲気悪くて、三流大学での、たいした指導医じゃないD先生に~~~」
D「お前が一番、性格悪いんじゃないか?」
S「うーん、たしかに留学生が来ていて日本語でカンファレンスって疎外感与えますよね。彼らに対して礼儀を欠いていると思います」
D「そうだよ。そして、日本の医学生や医者が低く見られるんだ。見学とは広告だ。我々の存在が低く見られたら、今後留学生が来る可能性はどんどん下がっていく」
S「そうですね~明日から、がんばって英語でやってみようかな」
D「そう。挑戦する者にしか、勝利は訪れないのだ」
S「頑張ります、D先生~」
D「でも、さっきの暴言は忘れんからな」
第38回「英語でカンファレンスをやろう」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
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