D「S先生は英語、いつから勉強しだした?」
S「ぼくはオーソドックスに中学生からですね」
D「高校卒業する頃には、どのくらい英語力があった?」
S「まあ、ぼくは英検準1級くらいかなあ。友達には帰国子女とかいましたけど、ぼくは普通です」
D「では、「今の」英語力は?」
S「は?」
D「今の英語力だよ」
S「いや、今の英語力とか、、、考えてもみませんでしたけど、、、」
D「では、質問を変えよう。大学受験時代の英検準一級レベルと自称していた若き日のS先生の英語力と、今の英語力を比べると、どうだ?」
S「ええっと、、、そうですね。当時のほうが英語力があったと思います」
D「なぜだ?」
S「なぜって、受験勉強してたし、今よりも単語力はあるし、それに、、、」
D「それに?」
S「、、、、」
D「今は英語を勉強してない」
S「いや、ぼくは論文とかちゃんと読んでますよ。教科書もハリソン使ってますし、UpToDateだって」
D「では、なぜ受験時代よりも英語力が落ちるんだ?「ちゃんとやっていれば」落ちないんじゃないか?」
S「そりゃ、年を取れば記憶力も落ちるし、能力が下がるのは当たり前じゃないですか」
D「では、君の医者としての能力はどうだ?大学入学時代と、今とでは?」
S「そりゃ、今のほうがレベル高いに決まってるでしょ?」
D「なぜだ?身体能力だってオツムのできだって二十歳の頃のほうがずっと今よりよかったはずだ」
S「だって、これまでたくさんの研鑽を積んできたんです。当時とは全然勉強量が違いますよ、、はっ!」
D「ほうら、気づいたかな。じゃ、君は大学に入学してからどのくらい英語を勉強してきた?「ハリソン使ってます」って言ってたけど、ちゃんと読破したか?ちょっと調べ物をするときに数行流し読みする程度じゃないのか?自分の能力を高めるための工夫と努力はやっていたか?」
S「いえ、、やってませんでした」
D「音楽だってスポーツだって、どの領域でもそうなのだが、努力しない能力は必ず落ちるのだ。日本の医学生は、実に優秀な頭脳を持っていながら、医学部に入学すると、とたんに努力を止めてしまう。受験に疲れたせいかな?自分の才能を過信しているからかな?ま、理由は色々あるだろうが、とにかく事実は一つ。入学時代に比べ、卒業時に英語力が伸びている医学生は稀有ってことさ。そして、英検準一級レベルの英語ではとてもとても国際的には通用しないってことさ。会議でも議論できない。質問もできない。アピールもできない。英語で考えることも、作文することも、なーんにもできない」
S「、、、、確かに」
D「いいか、このままだと日本の医学と医療はどんどんガラパゴスになって取り残されるぞ。もっと危機感を持てよ。自分の才能のピークを18歳位で終わらせるな。努力しろ、努力しろ、努力しろ。そうすれば英語力なんて絶対に伸びる。俺が保証する」
S「先生に保証されても」
D「なんか言ったか?」
S「いえ」
D「教科書を開いてもどこを読んでいいか分からないレベルだから、億劫になって教科書を読まなくなるんだ。PubMedも使いこなせなくなる。いいか、繰り返すぞ。楽をしたかったら、努力しろ。努力し続けられる人間だけが、ラクラクに教科書を読み、論文を探し、そして医学知識をつけて今よりもよい医療に寄与できる。もっとよい医療にしようというモチベーションも維持できる。英語を楽々使いこなす力がないと、すぐに「今のまんまでいいや」と現状維持に走るんだよ、わかったか!」
S「ああ、今日も罵倒の一日だった、、、」
第36回「英語を死ぬ気で学ばせろ」その2 終わり
続く。
この物語はフィクションであり、DとSも架空の指導医です。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。