注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
2016年7月15日より、レポート提出のルールを変えています。学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。
また、未完成者が完成者より得をするモラルハザードを防ぐために、完成原稿に問題があってもあえて修正・再提出を求めていません。レポート内には構造的に間違いが散在します。学生のレポートの質はこれまでよりもずっと落ちています。そのため、岩田が問題点に言及した「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
AMLの患者に対する抗真菌薬の予防的投与で何を使うのがいいのか
Introduction
AMLの患者に寛解導入化学療法を行っている際に起こるカンジダやアスペルギルスなどの真菌感染に対して予防的な抗真菌薬の投与について、どの抗真菌薬が効果的なのかを考察した。
Data.1(1)
AML患者に対して最初の寛解導入化学療法が行われた際に、予防的にエキノキャンディン系を投与した患者群(42名)と糸状菌に作用するアゾール系(ボリコナゾール又はポサコナゾール)を投与した患者群(38名)で、侵襲性真菌感染症の発症について電子カルテを用いた後ろ向きのコホート研究を行った。これらの患者群では前者に50%、後者に31%の確率でフルコナゾールが併用されているが、p値は0.11であり併用する患者数において有意差はない。 カンジダに限定した侵襲性感染症の発症率は前者で8%、後者で0%であり、侵襲性真菌感染症に罹患しない確率を寛解導入療法を始めてから経過した時間と相関させた値が図1のように示された(ウェブ上で図は示せず)。
Data.2(2)
白血球減少の患者に予防的にポサコナゾールを投与した患者群(304名)とフルコナゾール又はイトラコナゾールを投与した患者群(298名)のランダム化比較試験を行った。その結果、侵襲性真菌感染症の発症率は前者で2%、後者で8%という結果が得られた。(p<0.001)特にアスペルギルス感染症については前者では1%、後者では7%となった。(p<0.001)また生存率についても前者において有意的な差が見られた。(p=0.04)しかし消化管障害を主とする有害事象の発症率は前者で6%、後者で2%となった。(p=0.01)
Conclusion
現在日本における好中球減少患者への抗真菌薬の予防的投与は、カンジダではフルコナゾールの経口投与又はイトラコナゾールの内用液、またアスペルギルスではイトラコナゾールの内用液が有用とされている。(3)これらの2つのデータから、AMLの患者における抗真菌剤の投与において有効なのはポサコナゾールであると考察できる。特にデータ2から得られている情報からポサコナゾールが特にアスペルギルスを予防する上で非常に有用であると考えられる。また日本でポサコナゾールはまだ認可されておらず、同じ第3世代アゾール系のボリコナゾールが使用できる。ガイドラインにおいてボリコナゾールの使用が推奨されていないのはエビデンスが不足しているためと記載されており、これからの研究が進むにつれ推奨されるようになると思われる。しかしこれは全ての患者に一様に投与すればいいということではなく、データ2で得られた有害事象に関する報告から、感染症の予防よりも消化管障害や肝障害といったリスクの高い患者には従来の第2世代アゾール系の使用が望ましいと考えられる。
Reference
1)Effectiveness of Primary Anti-Aspergillus Prophylaxis during Remission Induction Chemotherapy of Acute Myeloid Leukemia (Mariza Z.R.Gomes Antimicrob Agents Chemother. 2014 May; 58(5): 2775–2780.)
2)Posaconazole vs. Fluconazole or Itraconazole Prophylaxis in Patients with Neutropenia(Oliver A. Cornely N Eng J Med 2007;356:348-59)
3) 深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014
寸評:あまり良いレポートとはいえません。学生にありがちな(じつは医者にも多いが)、情報をただつなげただけのレポートで、前の文章と後の文章がうまくつながっていません。例えば、
現在日本における好中球減少患者への抗真菌薬の予防的投与は、カンジダではフルコナゾールの経口投与又はイトラコナゾールの内用液、またアスペルギルスではイトラコナゾールの内用液が有用とされている。(3)これらの2つのデータから、AMLの患者における抗真菌剤の投与において有効なのはポサコナゾールであると考察できる。
とか。A4一枚という短い文章を書かせているのはこの論理的整合性を鍛えるためです。精進しましょう。
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