注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
蜂窩織炎の起因菌同定に対して血液培養は意味があるのか?
担当した患者は下肢蜂窩織炎で血液培養、滲出液培養を施行されていた。血液培養は3回行われ、その全てが陰性であり、滲出液培養では1回の培養検査で緑膿菌が同定されたという結果から、蜂窩織炎における血液培養の有用性を検討してみようと思った。
市中感染の蜂窩織炎の患者では、血液培養が陽性となるのは2~6%と言われている。[1]例えば、市中感染の蜂窩織炎で入院中の成人553人の患者に対して行われた血液培養の研究では、そのうち起因菌が同定できた患者は11人(全体の2.0%)であった。[2]
四肢蜂窩織炎に関しては、308人に対して血液培養を行った研究で、そのうちの57人(18.5%)が検査陽性になったという報告がある。同研究では抗菌薬の治療歴がないこと(OR 5.3,95%CI 1.4-20.3)、2つ以上の併存疾患の存在※(OR 4.3,95%CI 1.6-11.7)、発症から2日未満であること(OR 2.44,95%CI 1.07-5.56)、近位の肢への拡大(OR 6.95 95%CI 3.03-12.04)は血液培養陽性となる可能性を高める因子であることがわかった。[3]
結論として、市中感染の蜂窩織炎患者の血液培養検査陽性率はさほど高くなく、これらの患者に対して血液培養を行うのは必ずしも必要でないと思われる。しかし、前述した4つの因子を持つ患者に対しては血液培養検査を行うべきかもしれない。
※肥満、COPD、DM、腎不全、アルコール依存症、肝硬変、心不全、免疫抑制
References
[1]Mandell,Douglas,and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases
[2] Perl B, Gottehrer NP, Raveh D, Schlesinger Y, Rudensky B,Yinnon AM (1999) Cost-effectiveness of blood cultures for adult patients with cellulitis. Clin Infect Dis 29:1483–1488
[3] G. Peralta & E. Padrón & M. P. Roiz & I. De Benito &J. C. Garrido & F. Talledo & M. J. Rodríguez-Lera &L. Ansorena & M. B. Sánchez(2009) Risk factors for bacteremia in patients with limb cellulitis. Eur J Clin Microbiol Infect Dis (2006) 25:619–626
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