注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
カテーテル挿入部のクロルヘキシジンアルコール製剤による皮膚消毒でCRBSIは減少させられるか?
米国CDCのカテーテル関連感染予防ガイドライン2011では中心静脈・末梢動脈カテーテル挿入前の消毒薬として>0.5%クロルヘキシジン(以下CHG)アルコールを第一選択としている(1)。しかし日本では本ガイドラインの発表後もポビドンヨード(以下PVI)水溶液の使用率が高い(2)。CHGアルコール製剤の使用によりCRBSIを減少させる事が可能か考察する。
Yamamoto(3)らは血液内科に入院中の84患者の中心静脈カテーテル挿入例に対し1%CHG+70%エタノール製剤と10%PVI水溶液を用いたランダム化比較試験を行った。CRBSIの発生件数は2件と7件、1000日カテーテルあたりのCRBSI発生件数は0.75と3.62(p=0.04)であった。この試験では有害事象に関する記述はなく詳細は不明である。
またMimoz(4)らは1181患者のカテーテル挿入例に対し2%CHG+70%イソプロピルアルコール製剤と5%PVI+69%エタノール製剤を用いたランダム化比較試験を行った。1000カテーテル日あたりのCRBSI発生件数は0.28と1.32(p=0.003)であった。有害事象は全身性のものはなく、皮膚反応の発生率が3%と1%(p=0.0017)であった。
以上のようにCRBSIの予防に関してはCHGが優位な傾向を示していると言える。しかしCHGの最適な濃度については統一された見解が無く、CDCガイドラインも>0.5%という曖昧な表現に留まっている。有害事象も考慮した異なる濃度のCHGの比較試験が必要であろう。また有害事象の発生率には人種差もあると考えられており、日本人を対象とした大規模試験が望まれる。
参考文献
- Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections, 2011
- 日本集中治療教育研究会.簡単アンケート第12弾:カテー テル関連血流感染症
- Yamamoto N et al. Efficacy of 1.0% chlorhexidine-gluconate ethanol compared with 10% povidone-iodine for long-term central venous catheter care in hematology departments: a prospective study. Am J Infect Control. 2014 May;42(5):574-6
- Mimoz O et al. Skin antisepsis with chlorhexidine-alcohol versus povidone iodine-alcohol, with and without skin scrubbing, for prevention of intravascular-catheter-related infection (CLEAN): an open-label, multicentre, randomised, controlled, two-by-two factorial trial. Lancet. 2015 Sep 17. pii: S0140-6736(15)00244-5
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