注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
感染症内科BSL 提出レポート
感染性心内膜炎(IE)の診断における経食道エコー(TEE)と経胸壁エコー(TTE)の特徴および有用性の違いは何か
IEは菌の種類、患者の基礎疾患などにより臨床像は非常に多彩で、診断の難しい疾患として知られる。よって、常にその可能性を鑑別診断に挙げることが重要であり、不明熱の重要な鑑別疾患である(1)。現在IEの診断基準としてDuke基準が広く知られている。この基準では、血液培養と同様に心エコー図を重要な検査とみなし、これら二つの所見を大基準としている(2)。エコーの方法としては経食道と経胸壁の2種類があり、IEを疑う患者に対してはまずTTEを行い、その後TEEを行うのが一般的とされる(3)。心エコー検査をなぜ2度も行うのか、それぞれの検査の違いについて興味をもったので両者の特徴および有用性について以下に考察する。
Fowler VG Jr1らは(4)、血液培養検査にて黄色ブドウ球菌が検出され、IEに頻発する所見(発熱、心雑音や末梢での出血など)を有する103人の患者に対して前向きコホート研究を行いTEEとTTEでのIEの発見率の違いについて調査した。Duke基準に基づいて診断するとIE確定とされる患者は25人であった。これらに対してTEEは感度32%,特異度100%であり、TTEは感度100%、特異度99%であった。
以上より、まず侵襲性の低いTTEによって検査を行い、陰性であるならば偽陰性である可能性を考慮し、より感度の高いTEEへと検査を進める現在の診断アルゴリズムは妥当だと言える。しかしながらこれらの検査における陽性とは、あくまで疣贅の存在を示したものにすぎない。IEの中には疣贅の存在しない、あるいは検出できない心内膜炎が存在することも考慮し(1)、Duke基準に基づいて血液培養の結果と総合的に考えて診断する必要がある。
(引用文献)
(1)レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 青木眞
(2)Up to date “Infective endocarditis: Historical and Duke criteria”
(3)Guidelines for the Prevention and Treatment of Infective Endocarditis (JCS 2003)
(4)Fowler VG Jr1, Li J, Corey GR, Boley J, et al. Role of echocardiography in evaluation of patients with Staphylococcus aureus bacteremia: experience in 103 patients. J Am Coll Cardiol. 1997 Oct;30(4):1072-8
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