注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
メトロニダゾールの投与量、投与期間とメトロニダゾールによる
中枢神経症状発症の関与について
メトロニダゾール(以下MNZ)は、嫌気性菌による感染症の治療に使用される薬のひとつである。副作用として、主に消化器症状が挙げられるが、重篤なものとして痙攣、小脳性運動失調、脳症などの中枢神経症状を起こしうる[1]。今回は、MNZの投与量、投与期間と中枢神経症状の発症の関連性について文献を検索し、考察した。
Bottenberg らは、MNZ内服後に中枢神経症状を発症したケースを報告している12件の論文20症例を集め、reviewとして報告している[2]。その20症例のうち、中枢神経症状を発症するまでのMNZの総投与量は、数値が明確に記載されているものの中で最少のものが21g(1.5g/日×14日)、最多のものが135g(1.5g/日×90日)であった。また、Papathansiousらは、患者が発熱性胃腸炎に対して投与されたMNZ 1.5g/日を6ヶ月間(総量約270g)飲み続けた際に、認知機能低下、短期記憶障害、人格変化などの中枢神経症状が現れたと報告している[3]。次に、投与期間について、KuriyamaらはPubmedにて1965年~2011年4月7日までのMNZによる中枢神経症状が報告されているcase reportを集め、systematic reviewとして報告している[4]。その報告によると、集めた64症例についてMNZの投与量の明記はないが、そのうちMNZによる中枢神経症状が発症するまでの期間の平均は、54日間であった。しかし、そのうちの26%は1週間以内に、さらに11%は72時間以内に発症しており、中枢神経症状発症までの投与期間は幅広かった。
以上のことからでは投与量と中枢神経症状発症の確率の関連は分からなかったが、一般的に治療で使用される投与量での発症が多数報告されていた。また、投与期間については、発症までの期間の平均は54日間であったと報告されているものの、26%が1週間以内、11%が72時間以内での発症が報告されている。すなわち、MNZによる中枢神経症状は一般的な容量での治療中いつでも起こりうるということである。MNZ投与による中枢神経症状の発症は多数報告されており、その使用の際は十分注意しなければならない。
[1] 青木眞 (2015). レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版 医学書院
[2] Bottenberg MM. Metronidazole-induced encephalopathy: a case report and review of the literature. J Clin Pharmacol. 2011 Jan;51(1):112-6.
[3] Papathanasiou A. Metronidazole-induced reversible encephalopathy in a patient with facioscapulohumeral muscular dystrophy. Clin Neuroradiol. 2013 Sep;23(3):217-9.
[4] Kuriyama A. Metronidazole-induced central nervous system toxicity: a systematic review. Clin Neuropharmacol. 2011 Nov-Dec;34(6):241-7.
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