注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
末梢静脈カテーテルの定期的な交換による静脈炎や感染予防の効果
多くの入院患者は、治療のために、人によって様々なカテーテルの留置を必要としている。しかしながら、カテーテルの留置は様々な問題を引き起こす。例えば、末梢静脈カテーテルの留置は血管内カテーテル関連感染症や静脈炎の原因となりうる。
IDSAの2011年のガイドラインによると、カテーテルの留置時間が72時間を超えると、血栓性静脈炎や細菌のコロニー形成の可能性が高まるとされている(1)。しかし、Lai KKらによると、末梢静脈カテーテルの留置時間を72時間と96時間で比べた時、静脈炎の発生する確率に有意差が認められなかった(2)。このことからIDSAは72時間ないし96時間おきに血管内カテーテルを交換することで血管内カテーテル関連感染症や静脈炎のリスクを予防できるとして推奨している。
しかし、Websterらによる比較試験では、定期的なカテーテルの交換と臨床的に必要な際に行うカテーテルの交換によって生じる静脈炎や感染症のリスクの差には有意差がなかったことから、定期的にカテーテルの交換を行ってもリスクを軽減することが出来るとは言えない。(3),(4)
このことから、IDSAの推奨する72時間ないし96時間おきにカテーテルを取り換えることは、医療コストの増大や、医療スタッフの負担、さらには患者への負担を招くにも関わらず、必ずしもリスクを軽減できるとは言えない。そのため、発赤や疼痛、硬結、浸出液などの静脈炎や感染症を疑う所見の出現といったカテーテルの交換が必要に迫られた際にする(5)にとどめるべきであると考えられる。
このことから、常に、挿入しているカテーテルが本当に必要か吟味し、不要なカテーテルの挿入は避け、どうしてもカテーテルが必要な場合は感染症や静脈炎などの臨床的に交換が必要になった際に迅速に対応できるように、普段から注意深く挿入口の診察をする必要がある。
(1)Naomi P.O’Grady,et al. Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter - related Infections.Clinical Infectious Diseases Advance April 1,2011
(2)Lai KK.Safety of prolonging peripheral cannula and i.v. tubing use from 72 hours to 96 hours.Am J Infect Control.1998 Feb;26(1):66-70
(3)Webster J,et al.Clinically-indicated replacement versus routine replacement of peripheral venous catheters.New search for studies and content updated(no change to conclusion),published in Issue 4,2013.
(4)Up To Date (Jeffrey D Band,MD et al.Prevention of intravascular catheter-related infections. )
(5)Leonard A.Mermel,et al.Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Intravascular Catherter-Related Infection:2009 Update by the Infectious Diseases Society of America
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