注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
急性胆管炎の診断におけるCharcotの3徴の有用性
急性胆管炎の症状は疼痛、嘔吐、黄疸や掻痒感があり、それに続いて倦怠感、発熱や悪寒が発症するとされている(1)。その中で特徴的な胆道疝痛(右季肋部痛)、黄疸、悪寒を伴う高熱を合わせてCharcotの3徴と呼ぶ(2)。Charcotの3徴は1877年にCharcotが肝臓熱として記載したものであり、今回はその臨床の現場での有用性を調べた。
Csendesらによる観察研究では、512件の急性胆管炎の症例において3徴のそれぞれの感度は、発熱は38.7%、黄疸は65.4%、腹痛 は92.2%であった。Charcotの3徴が揃う場合の感度はわずか22%であったが、特異度は91%と高値であった (3)。
Kiriyamaらによる多施設共同による794件の症例集積研究での検証ではCharcotの3徴の感度は26.4%、特異度は95.9%と報告されており同様の傾向が見られた(4)。
Csendesらの報告とKiriyama らの報告からCharcotの3徴のそれぞれの陽性尤度比、陰性尤度比を求めると前者ではLR+:2.44,LR−:0.86、後者では LR+:6.44,LR−:0.77であった。
この値はCharcotの3徴を認めた場合に急性胆管炎の存在する可能性は、15%~35%程度増加するが3徴が揃わなかった場合でもその可能性は0~15%程度しか低下しないことを示している(5)。
【結論】
Charcotの3徴は急性胆管炎の診断において特異度は高いが感度が低いことから、3徴が全て認められた場合にのみ診断に影響を与えると言える。臨床の現場におけるその有用性は限定的である。
参考文献
1. David Warrell,Oxford.Textbook of Medicine (volume 2).2003
2. Dan Longo,Anthony.Fauci,HARRISON’S Gastroenterology and Hepatology.2013
3. Csendes A, Diaz JC, Burdiles P, Maluenda F, Morales E. Risk factors and classification of acute suppurative cholangitis. Br J Surg 1992 ; 79 : 655─ 8.
4. Kiriyama S, Takada T, Strasberg SM, Solomkin JS, Mayumi T, Pitt HA, et al. New Diagnostic Criteria and Severity Assessment of Acute Cholangitis in revised Tokyo Guidelines. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2012 ; 19 : 548─56
5. Steven MuGee. EVIDENCE-BASED PHYSICAL DIAGNOSIS, THIRD EDITION,2014
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