注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
市中肺炎におけるエンピリカル治療
市中肺炎におけるエンピリカル治療 市中肺炎の代表的な微生物には、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ、マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラ等があり、エンピリカル治療として抗菌薬を選択する際は、これら複数の微生物のカバーをすることを考える。抗菌薬投与はできるだけ早く、受診後6時間以内に投与するのが望ましいとされており、それ以上の遅れは死亡率を上げる1)。 外来患者の治療薬は、IDSA/ATSの共同ガイドラインでは、生来健康であった患者にはマクロライドもしくはドキシサイクリンであり、基礎疾患(COPD、糖尿病、心不全、肝障害、腎不全など)を有する患者には呼吸器への移行が良好なレスピラトリーキノロンを用いるか、もしくはβラクタム剤とマクロライドの併用とされている2)。しかし、日本呼吸器学会(JRS)のガイドラインでは細菌感染症疑いの外来治療ではβラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンが第一選択である3)。マクロライドを用いない理由としては、日本ではマクロライド耐性肺炎球菌の割合が80%以上であり、かつ肺炎球菌がCAPの原因微生物の第一位(日本では24.6%, 2006年 4))であることが挙げられる。非定型肺炎疑いではマクロライドやテトラサイクリンを用いることとなっている2)。 入院患者の選択薬は、IDSA/ATSではレスピラトリーキノロンを用いるか、もしくはβラクタム剤とマクロライドの併用とされている。中でもICUの患者には、βラクタム剤に加え、マクロライドまたはフルオロキノロンの併用とされている2)。このように一般的には抗菌薬の併用が奨励されているが、市中肺炎においてエンピリカルに非定型肺炎のカバーを行うことは、患者の生存率や治療効果に影響を与えないとする文献もあり5)、喀痰グラム染色で細菌感染であることがある程度予測できる場合には、βラクタム剤のみを使用するのも一つの手段であろう。 <参考文献> 1) Frederick S.Southwic:感染症診療スタンダードマニュアル 羊土社 p.144 2) Infectious Diseases Society of America/American Thoracic Society Consensus Guidelines on the Management of Community-Acquired Pneumonia in Adults 2007 Mar 1;44 Suppl 2:S27-72. 3) 日本呼吸器学会 成人市中肺炎治療ガイドライン 2007 4) J Infect Chemother 2006;12:63-9 5) Arch Internal Med(Sep 26;165(17):1992-2000)
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