注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
リファンピシンが使えない場合のレジメン
【結核の標準的治療】
治療初期(最初の2ヶ月)にはイソニアジド(INH)、リファンピシン(RIF)、ピラジナミド(PZA)、エタンブトール(EMB)による4剤併用療法を行い、その後INHとRFPによる治療を最低4ヶ月間行う。もしくは、治療初期にINH、RIF、EMBの3剤併用療法を行い、その後INHとRIFによる治療を最低8ヶ月間行う。
【リファンピシンが使えない場合のレジメン】
リファンピシン(RFP)は上記のようにINHと並んで最も重要な抗結核薬の一つであり、結核治療において原則用いられる。しかし、RFPの副作用として皮膚の発疹、血小板減少、腎炎、胆汁うっ滞、肝炎が挙げられ、このような副作用が出た場合にはRFPの中止が検討される。またRFP耐性結核の場合にも使うことは出来ない。RFPは、すべての6ヶ月のレジメンの基礎となっているので、治療期間の延長が必要である。
RFPのみが使えない場合は、INH、EMB、PZA、フルオロキノロン(FQN)による治療を12〜18ヶ月間行う。(重症例ではアミノグリコシドを最初の2〜3ヶ月使用しても良い。)
RFPだけでなく、INHも使えない場合には(多剤耐性結核 MDR-TB)は治療失敗を避けるために広範な治療が必要となる。FQN,PZA,EMB,ストレプトマイシン(SM)による4剤併用療法を18〜24ヶ月間または、喀痰培養の陰性化後少なくとも9ヶ月間の治療が効果的である。ただし、SMに耐性を持つ場合、アミカシン、カナマイシンのような他の注射薬により行う。別の文献によれば、感受性の高い薬剤を最低4剤併用して7〜8.5ヶ月の初期治療を行い、そのあと少なくとも3剤により治療を継続し計25〜27ヶ月の治療期間を設け、また感受性が低くない限りFQN、PZAを治療薬に含む組み合わせが最も治療成功率が高いという結果が出ている。RFP,INHに加えてEMBまたはPZAに耐性がある場合、FQN、アミノグリコシドと感受性の高い薬剤2剤で最低24週治療を行う。FQNを含むニューキノロン系はRFP、INH、EMB、PZAの使えない結核治療において使わない場合より、40%で良好な経過となるとの報告がある。
参考文献
レジデントのための感染症診療マニュアル 青木眞
Basic&Clinical Pharmacology 10th Edition Bertram G.Katzung
Best drug treatment for multidrug-resistant and extensively drug-resistant tuberculosis Lancet infect Dis2010;10:621-29
Multidrug Resistant Pulmonary Tuberculosis Treatment Regimens and Patient Outcomes:an individual Patient Data Meta-analysis of 9,153 Patients PLOS Medicine August 2012 volume 9 issue 8
Treatment Outcomes among Patients with Extensively Drug-Resistant Tuberculosis: Systematic Review and Meta-Analysis clin Infect Dis. Jul 1, 2010; 51(1): 6–14.
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