シリーズ 外科医のための感染症 24. 心臓血管外科篇 ICD, ペースメーカー感染
ICDって、こっちのICDは英検4、、、Infection Control Doctorのそれではなく、implantable cardiac defibrillatorのことです。前胸部に埋め込んだこのデバイスは皮下にあることから、比較的感染を起こしにくいです。しかし、黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性菌(CNS)のような皮膚軟部組織感染症を起こす菌がここに「ポケット感染」を起こし、それが原因でその先にあるリード感染を起こす可能性があります。リードの先には心臓があります。心臓内感染、、とくに感染性心内膜炎を合併する化膿性が出てくるのです。ペースメーカー感染は比較的稀ですが、起きるとなかなか厄介な感染症なのです。
診断は比較的簡単で、デバイスの挿入部位に発赤、疼痛、腫脹といった炎症所見が認められます。ポケット感染の場合はジェネレーターやICDを除去し、そのポケットの部分を培養して原因菌を突止めます。IEの合併が懸念されますから、当然血液培養は必須です。
デバイスとリードの除去は一般的に必要と考えられています。除去がない場合の再発率は50%もあったとうスタディーもあります。ただ、言うは易し、行うは、、で現実にはリードの除去は難しいことも多いです。最近では、経皮的リード除去も時々行われますが、これも簡単ではないようです。
治療は血液培養陰性なら10日程度、血液培養が陽性かつ経食道エコーが陰性なら2週間適度、IEがあったり、(ねちっこい)黄色ブドウ球菌が原因のときは最低4週間は治療することが多いです。リードに疣贅がついているときもIEと同様に治療します。
デバイスの再埋め込みについては諸説ありますが、血液培養陰性化らから2週間後くらいに行うのが一番妥当なように思います。
まとめ
・ペースメーカー、ICD感染はリスクは低いが、起きると怖い。
・デバイスは抜去するのが望ましい。
・血液培養は必須。
・血液培養陰性化2週間程度でデバイス再埋め込み
文献
Gandhi T et al. Cardiovascular implantable electronic device associated infections. Infect Dis Clin N Am 2012;26:57-76
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