シリーズ 外科医のための感染症 19. 泌尿器科篇 フルニエ壊疽、黄色肉芽腫性腎盂腎炎、気腫性腎盂腎炎、気腫性膀胱炎
今回は、泌尿器科系感染症のエマージェンシーをまとめて。
泌尿器科関連でもっとも恐ろしいのがフルニエ壊疽(Fournier's gangrene)。これは会陰部の壊死性筋膜炎で、原因は好気性菌、嫌気性菌を含む混合感染です。診断は「そこを見るだけ」で、血液検査や画像は必要ありません。
壊死性筋膜炎同様アグレッシブなデブリドマンと広域抗菌薬が必要で、通常は
バンコ+メロペン
のようなえげつないカバーをして、
ダラシン(クリンダマイシン
を毒素産生を抑えるために使います(壊死性筋膜炎の項参照)。「フルニエ疑ってます」と言えばすぐに飛んできてくれる泌尿器科の先生はほんっとに頼りになります。
黄色肉芽腫性腎盂腎炎 (xanthogranulomatous pyelonephritis)
黄色肉芽腫性腎盂腎炎はヘンテコな名前ですが、慢性腎盂腎炎の亜型です。尿路感染を繰り返す女性に多く見られ、病理学的には炎症が繰り返されたための肉芽腫形成と脂質の多いマクロファージが見られます(これをマクロで見ると、「黄色」に見えるというわけ。xanthoはキサントクロミーで知られる、「黄色」という意味のギリシャ語xanthosから来ています)。原因微生物は普通の尿路感染と同じです。
治療は、肉芽腫が人造を破壊していくため、外科的なものになり、腫瘍のように病変部位を切除します。抗菌薬ももちろん用います。
気腫性腎盂腎炎(emphysematous pyelonephritis)
気腫性腎盂腎炎も比較的稀な尿路感染症です。糖尿病患者に多く、重症感の強いプレゼンをします。画像にて腎臓内にガスを見つけて診断します。ガス産生と壊死形成を行うこの疾患は、あたかも「腎臓のガス壊疽」チックなイメージです。しかし、原因菌は嫌気性菌ではなく、ガスを産生する大腸菌やクレブシエラのことが多いです(こいつらも、ガス出します)。カンジダは一般的には「尿路感染を起こさない」が基本ですが、まれに気腫性腎盂腎炎の原因になることがあります。治療は大量の抗菌薬に加え、外科的なドレナージや腎摘出が必要です。システマティック・レビューによると、腎摘出よりもドレナージ・プラス抗菌薬の方が生命予後がよかったという結果でした(Somani BK et al. Is percutaneous drainage the new gold standard in the management of emphysematous pyelonephritis? Evidence from a systematic review. J Urol. 2008 May;179(5):1844–9)。
気腫性膀胱炎(emphysematous cystitis)
こちらは気腫性腎盂腎炎の膀胱版。普通の膀胱炎と異なり、半数で血液培養が陽性になる全身感染症です。原因はやはり大腸菌やクレブシエラ。こちらも膀胱壁内にガスを認めて診断します。ただし、予後はよくて内科的治療(抗菌薬)だけでたいてい治ります。
まとめ
・フルニエ壊疽は基本、壊死性筋膜炎と一緒。すぐに診断、すぐに治療。デブリドマン必須。
・黄色肉芽腫性腎盂腎炎と気腫性腎盂腎炎は外科的治療を。
・気腫性膀胱炎は内科的に治る。
文献
Meyrier A. Xanthogranulomatous pyelonephritis. UpToDate. Last updated Sep 4, 2013.
Weintrob AC, and Sexton DJ. Emphysematous urinary tract infections. UpToDate. Last updated, Oct 7, 2013.
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