注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
クリプトコッカス髄膜炎の治療におけるフルコナゾールの役割について
・クリプトコッカス髄膜炎の治療
導入療法:AmBd(0.7~1.0mg/kg/day, 静注)とフルシトシン(100mg/kg/day, 経口)の併用を4~6週間行うことが推奨されている。AmBdに耐性を認めるなどでポリエン系薬剤が使用できない場合は、フルコナゾールとフルシトシンの併用またはフルコナゾール単体での治療を考える。
強化療法:フルコナゾール(400~800mg[6~12mg/kg]/day, 経口)を最低8週間投与することが推奨されている。
維持療法:HIV患者以外ではフルコナゾール(200~400mg[3~6mg/kg]/day, 経口)を6-12ヶ月間、HIV患者では少なくとも12ヶ月間続けることが推奨されている。[1]
・フルコナゾールの役割について
フルコナゾール(経口)は、生態利用率が80%であり、経静脈投与と同様の血中濃度が得られる。半減期は30時間ほどであり、非常に長い。水溶性が高く、髄液や組織液に移行しやすい(髄液で血清の70-90%、組織液で血清の50%程度)。また、抗真菌薬としては副作用も少なく、耐性を獲得しにくいといった特徴もある。[2]
このような薬剤であるが、クリプトコッカス髄膜炎の初期治療としてフルコナゾール単体やフルシトシンとの併用による治療を推奨するエビデンスは十分でなく、ポリエン系薬剤はクリプトコッカス髄膜炎における導入療法に必要である。
クリプトコッカス髄膜炎の治療において、導入療法のみで治療を終了した場合、髄膜炎の再発率はHIV患者で40-50%と高く、non-HIV患者でも10-30%となっている。[3]
そこで、標準的な初期治療をなされた患者は、症状はないが持続する感染を十分に評価されなければならず、初期治療の後に長期間の維持療法を行うことが推奨されている。
維持療法によって、髄膜炎の再発が減ることが示されている。1991年のアメリカの論文によると、HIVに感染しているクリプトコッカス髄膜炎の患者において、維持療法としてフルコナゾールを投与された患者は1人も髄膜炎の再発を起こさなかったのに対して(0/34)、維持療法を行われなかった患者群では15%(4/27)髄膜炎の再発が起こった(p=0.03)。[4] また、2001年のアメリカの論文によると、non-HIV患者についても、フルコナゾールを強化・維持療法に使用することで、髄膜炎の再発率が4%(5/127)であったことが示された。[5]
以上より、フルコナゾールはクリプトコッカスに対する抗真菌効果や髄液移行性がすぐれていること、また、臨床研究の結果から、維持療法に使われることが推奨される。
・参考文献
[1] Perfect JR,et al:Clinical Practice Guidelines for the Management of Cryptococcal Disease:2010 Update by the Infectious Diseases Society of America.Clin Infect Dis.2010 Feb 1;50(3):291-322.
[2] レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版
[3] Dromer F1,et al:Comparison of the efficacy of amphotericin B and fluconazole in the treatment of cryptococcosis in human immunodeficiency virus-negative patients: retrospective analysis of 83 cases. French Cryptococcosis Study Group. Clin Infect Dis. 1996 May;22 Suppl 2:S154-60.
[4] Bozzette SA1, Larsen RA, et al:A placebo-controlled trial of maintenance therapy with fluconazole after treatment of cryptococcal meningitis in the acquired immunodeficiency syndrome. California Collaborative Treatment Group. N Engl J Med. 1991 Feb 28;324(9):580-4
[5] Pappas PG1, et al: Cryptococcosis in human immunodeficiency virus-negative patients in the era of effective azole therapy. Clin Infect Dis. 2001 Sep 1;33(5):690-9. Epub 2001 Jul 26.
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