Hand Hygiene Adherence Among Health Care Workers at Japanese Hospitals: A Multicenter Observational Study in Japan.
日本の医療現場での手指衛生の実態を崎浜さんが中心になってまとめました。ぼくもちょこっとお手伝いしました。共著者の本田仁先生(感染コントロールのオーソリティーです)が、レビューを書いています。ご本人の許可を得て転載しますね。
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建設的批判(constructive criticism)と医療関連感染対策
最近は自分の臨床研究の他に幾つか感染症に関する臨床研究のお手伝いをさせていただくことがあり、こういう業務も意味が深い。今回の論文も徳田先生、崎浜さんコンビとご一緒させていただいたものだ。
今回の論文の内容は非常に重要な意味を持つ内容である。”日本の手指衛生率は悪い”という断言された内容だからだ。それをpeer-reviewedで、 世界の多くのみなさんがよめる英論文に発表されている点である。私は日本の病院至る所で働いた訳ではないので、これが日本の現状を示しているとはかぎらな い。しかい私のすくない経験でもこの程度が多くの病院の現状であることはほぼ間違いないと思う。感染業務に携わる皆さんも、薄々は感じていたであろうこと がただ明らかになっただけだとおもう。
さらに今回の話はpatient contactの前の手指衛生を直接観察法でみている。手指衛生の評価は様々な方法(アルコールの使用量など)あるがこれは個々の使用状況を担保しない。 そのため、直接観察法はいまでも最も信頼性の高いカウント方法である。またさらに病院と関係ない第三者がこれを黙って観察した点も重要である。
これは日本の(感染対策)医療に対する(建設的)批判である。正直な感想を申し上げると日本に戻って来てから感染対策の際に、いつも問題になる事は baseline dataがないこと、さらにこのようなnegative dataによる建設的批判に対して、感情的な反応を示す人々がある一定数いることである。誰だって批判されることは気持ちのよいものではないが、これはき ちんと咀嚼する必要がある。なぜならこれは患者のためであり、手指衛生がコンタクトで伝播する微生物において、どんな感染対策(接触感染対策など)よりも 簡便で、重要で大きなインパクトがあるからである。
建設的な批判を受け入れ次に進むことは成長を促す。内科レジデンシー中に最も勉強になったカンファレンスのひとつはM&M だし、感染症フェロー中のリサーチカンファレンスの初期はまさに八つ裂き状態だったが、そのように建設的批判を浴びせてくれる人がいたことは本当にありが たい。
今回の論文の参加施設の多くではその後この建設的批判を受け入れ、改善にむかっている。その内容はまた今後論文として世界の同業者にみてもらう予定である。
この臨床研究の中心的な役割を果たした崎浜さん、おつかれさまでありました。
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