献本御礼
しごくまっとうな本だ。でも、まっとうな本は売れず、デマゴーグの煽りが売れる現実をずっと見ていたので、「この本もあんまり売れないだろうな」とぼくは悲しく予想した。予想は外れた。これを書いているとき、瞬間風速で、がん関係では密林1位だった。まだ捨てたものでもないのですね。
がんは未だに難しい病気だ。NEJMなどのトップジャーナルに紹介された「効く」という治療も、キュインというカプランマイヤーカーブが、キュウウン、というちょっと緩やかなカーブになり、p値が小さくなって「効く」、、、、これは医療者以外には納得できない「効く」の姿であろう。
よって、患者/家族は藁にもすがる思いになり、実際に藁にすがる。トンデモ科学やヘンテコな治療が横行する隙が生まれる。
日本には876人しかオンコロジストがいないのだそうだ。「絶滅種」の感染症専門医よりも少ないのだ(まあ、質のところは今はおいといて)。年間75万人ががんになるという日本で、これは由々しき問題だ。「抗がん剤」が効くかどうか、という議論もさることながら、そもそも日本でまっとうながん診療が行われているのか、という勝俣先生の懸念は、「日本でまっとうな感染症診療が行われているのか」について熟知している(本当に熟知してます)僕から見ると、そしてがん患者たちのFNなどの合併症への対応をみていると、とてもよく理解できる。
だから、勝俣先生は,近藤誠氏のような存在が存在する背景や根拠をよく理解している。近藤氏を不勉強だとか、バカだとか、全否定せず、「がんもどき」の存在の可能性も肯定している。彼のレターも肯定的に評価する、。多くのがん関係者(オンコロジストにあらず)が「近藤」と聞くと頭に血がのぼって罵倒/バトルモードになるのとは対照的だ。
勝俣先生は残念ながら、日本のがん領域では「マイノリティー」である。これからまっとうながん診療をリードしていくべき存在だ。だから、近藤誠が批判する日本医療の現状の、そのダークな部分を理解しつつ、近藤理論の無茶を批判する、というアクロバティックな議論をせざるをえない。それは、党派性を作って、大勢が少数をたたく、みたいな図式をとらないやり方だ。でも、こういうやり方もちゃんと有効になっているのだから、日本人は昔よりも確実に賢くなっているのだとぼくは思いたい。
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