著者献本御礼。書評依頼されたのですが、出版社の許可をいただいてこちらにも転載します。
2006年、聖路加国際病院のチーフレジデントだった西原崇創先生が「そこが知りたい!感染症一刀両断!」を上梓されたときは、「すごい若手が出てきたなあ」と嘆息したものだ。その西原先生が、やはり聖路加でチーフレジデントを務め、エモリー大学で感染症科フェローを修了した小林美和子先生とタッグを組んで出したのが本書である。
タイトルは派手だ。章の頭に4コマ漫画のイントロがある。カラーの図表や写真も多い。文体はブレット方式(箇条書き)に編集してあり、口調も丁寧(ですます調)で読みやすい。著者らに似つかわしく、若々しいテキストだ。
しかし、表面的な目新しさにだまされてはいけない。内容を読むとこれがとてもオーソドックス。基本に忠実に、感染症の診断から治療までのプロセス、「原則」が丁寧に説明されている。日本の感染症診療は瑣末でテクニカルな部分よりも、こうした「基本」がおそろかになりがちだ。本書が診療現場に寄与するところは、非常に大きい。
感染症学、微生物学、ワクチン学、抗菌薬学などの基本的な内容が網羅されている本書は、いわばMandell、Versalovic、Plotkin、Kucersといった「バイブル」のダイジェスト版といってよい。著者らがこうしたオーソドックスな教科書を繰り返し読み、日々の診療に取り組んできたかの証左である。ちゃんとした教科書をきちんと読んで臨床の研鑽を積むのは基本であり、「当たり前」なのだが、その当たり前のことが出来ている臨床医が、日本にどのくらいいるだろうか(特に感染症の分野で)。
具体的な検査の出し方、抗菌薬の投与量も明示してあり、勉強のための本としてだけではなく、診療のマニュアルとしても活用できる(錠剤やバイアルの写真まで載っている!)。マニアックなサイドストーリーも多い。若手・学生向けに書かれたであろう本書、ぜひシニア・レベルにも一読してほしい。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。