IgG4関連疾患は、病変組織へのIgG4陽性形質細胞の浸潤または腫瘤形成、さらに閉塞性静脈炎や特徴的な花筵状の線維化が見られる疾患の総称である。IgG4関連疾患には以下のものが含まれる。
▪ 一型自己免疫性膵炎 ▪ IgG4関連硬化性胆管炎 ▪ ミクリッツ病
▪ 硬化性唾液腺炎 ▪ 炎症性眼窩偽腫瘍 ▪ 慢性硬化性涙腺炎
▪ 特発性後腹膜線維化症 ▪ 慢性硬化性大動脈炎、大動脈周囲炎
▪ リーデル甲状腺腫 ▪ IgG4関連間質性肺炎、肺炎症性偽腫瘍
▪ IgG4関連腎疾患 ▪ IgG4関連下垂体炎 ▪ IgG4関連硬膜髄膜炎
IgG4関連疾患の疫学研究は、個々の疾患に関する報告のみである。日本人を対象とした研究では自己免疫性膵炎は1,000,000人中8人(有病率= 8×10-6)と推計されており、男女比は男:女=2.85 : 1であり、その内の95%は45歳以上であった[1]。ただし発症の男女差は病変臓器によって異なる。IgG4関連膵炎では高齢男性に多く、IgG4関連唾液腺炎では男女差はない[2]。
<診断>
IgG4関連疾患の診断は病変部の生検を行い、IgG4陽性形質細胞の浸潤や花筵状の線維化などの特徴的な組織像を得ることによって行われる。診断的なIgG4陽性形質細胞の数は多くの組織では最低30~50個/HPFとされている。しかし腎臓などいくつかの組織では10個/HPFでも診断的な所見と考えられている[3]。血清IgG4はIgG4関連疾患で上昇することもある。しかし血清IgG4上昇は診断の助けにはなるが決定的なものではない[4]。したがってIgG4関連疾患の診断には可能な限り、病変臓器の生検を行うことが必要である。
<治療>
プレドニゾロンを経口投与で40mg/dayで開始し、病変臓器の機能回復傾向が見られれば2ヶ月以上の期間で投与量を漸減する。ほとんどの患者でグルココルチコイドによって数週間以内に症状の改善、病変部または肥大した臓器の縮小、病変臓器の機能改善が見られ、血清IgG4の低下が見られることもある[2]。しかしながら中には効果が認められない場合もある。こういった患者に対してはリツキシマブが多くの患者で効果的であったという報告がある[5, 6]。
<予後>
治療なしで自然軽快することもあるが、その場合多くが再発する。治療を開始した患者でも、治療が途中で中断されれば再発することが多い[2]。またIgG4関連膵炎の患者では発癌の相対危険度は4.9 (95%CI: 1.7-14.9)であったという報告もある。この研究ではIgG4関連膵炎の診断後に胃癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、非ホジキンリンパ腫を発症した[7]。ただしこの研究はIgG4関連膵炎の患者を注意深くフォローアップした結果、発癌がより早期に見つかったのではないかとも考えられるため、どこまで臨床的意義があるのかについては考慮が必要である。
【参考文献】
1. Nishimori I, Tamakoshi A, Otsuki M. Prevalence of autoimmune pancreatitis in Japan from a nationwide survey in 2002. J Gastroenterol 2007; 42: Suppl 18:6-8.
2. Up To Date 「 Overview of IgG4-related disease 」
3. Cheuk W, Chan JK. IgG4-related sclerosing disease: a critical appraisal of an evolving clinicopathologic entity. Adv Anat Pathol 2010; 17: 303.
4. John H, et al. IgG4-Related Disease. N Engl J Med 2012; 366: 539.
5. Khosroshahi A, et al. Rituximab therapy leads to rapid decline of serum IgG4 levels and prompt clinical improvement in IgG4-related systemic disease. Arthritis Rheum 2010; 62: 1755.
6. Khosroshahi A, et al. Rituximab for the treatment of IgG4-related disease: lessons from 10 consecutive patients. Medicine (Baltimore) 2012; 91: 57.
7. Shiokawa M, et al. Risk of cancer in patients with autoimmune pancreatitis. Am J Gastroenterol 2013; 108: 610.
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