心房細動の治療
治療の適応について
心房細動は75歳以上の10%にみられる不整脈[4]であるが、そのすべてが治療適応とはならない。心房細動を訴えている患者のうち、60%前後は24~48時間で洞調律に復帰[4]し、全員が再発するわけでもないため短期的な抗不整脈薬の投与で治療を終了できる。また、無症状の慢性心房細動は血栓リスクがない限り治療介入の必要はない。レートが早く動悸や息切れを訴える場合や発作を繰り返す場合は以下の治療が必要となる。
治療方法と目標
全身性塞栓症の予防と、リズムコントロール(洞調律で脈拍数を維持)もしくはレートコントロール(心房細動のまま脈拍数のみを戻す)が治療目標となる。
塞栓症のリスクと評価には、CHADS2(CHA2DS2-VASc) risk scoreなどを用いる。うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病がそれぞれ1点、心筋虚血、TIA、塞栓症の既往があるで2点、でスコアリングされる。CHA2DS2-VAScではこれに加えて弁膜症、65~74歳、女性1点ずつの計9点となる。年間脳梗塞発症率は0点で0%、1点で1.3%、2点で2.2%、3点で3.2%、4点で4.0%、5点で6.7%、6点で9.8%、7点で9.6%、8点で6.7%、9点で15.2% [1]。心房細動の患者に対しては基本的に抗凝固療法を行うが、0点の場合は必須でない。[6] 抗凝固療法には主にワーファリンが用いられるが、PT-INRを定期的に測定し投与量調節を行う必要がある。ワーファリン使用中の年間出血リスクは過去のランダム化比較試験によると1~3%とされる。[7] PT-INRの目標値は2.0〜3.0程度で、年齢や機械弁の有無により異なる。[5] 近年PT-INR測定と用量調節が不要で、ワーファリンと同等~それ以上の効果をもつダビガトランも認可された。
リズムコントロールのためには、抗不整脈薬、経皮的カテーテルアブレーション、手術のいずれかが選択される。心房細動状態からサイナスリズムに戻すために電気的除細動が必要になる場合もある。ただし、抗不整脈薬の使用を減らしレートコントロールするだけでも死亡率や合併症の発症率が大幅に改善するとの研究がある。[1,5] 心拍の目安は100/分前後。[4]
心房細動に対する標準治療が抗不整脈薬であり、房室結節の伝導を抑えるβブロッカー、ジゴキシン、非脱分極性Caチャネルブロッカーなどが選択される。[1] 服薬コンプライアンスがよければ頓服よりも継続的な投薬が望ましい。[5]
経皮的カテーテルアブレーションは、肺静脈内の心房筋束(心房細動の発生源となっている)を心房から隔離する手技。再発性の症候性心房細動、薬物療法への反応不良な心房細動に対する代替治療として行われ、治療成功率は50-80%とされる。 [3]
心房細動のマイクロリエントリー回路をメス、アブレーションなどで物理的に切断するMaze手術等は、弁膜症や冠動脈疾患合併症例の手術の際に施行される場合が多い。10年後のAF治療成功率は89.3%との研究結果がある。[2]
発作性、持続性、慢性心房細動のフォロー
定期的に抗凝固療法の評価、症状の変化を含むfunctional statusの変化、抗不整脈治療の評価、レートコントロールの評価を行う。冠動脈疾患や心不全の症候の確認も必要である。[1]
参考文献
- UP TO DATE “Overview of atrial fibrillation"
- UP TO DATE "Surgical approaches to prevent recurrent atrial fibrillation"
- UP TO DATE "Catheter ablation of cardiac arrhythmias: Overview and technical aspects"
- 極論で語る循環器内科 香坂 俊
- 循環器治療薬ファイル 村川 裕二
- HARRISON'S INTERNAL MEDICINE 18th edition
- UP TO DATE "therapeutic use of warfarin”
コメント
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