HBVのゲノム構造は4つの遺伝子S,C,P,Xから成り立っていて、C遺伝子によってコードされる27nmのヌクレオカプシド蛋白上の抗原がB型肝炎コア抗原Hepatitis B core antigen(HBcAg)と呼ばれている。HBc抗体はその抗原に対する抗体である。HBc抗体はB型肝炎感染時に最も早く血中に検出される抗体で、急性感染後6-8週ではIgM anti-HBcが優位となりそれ以降はIgG anti-HBcが優位となる。[1]
血清学的にIsolated HBc Antibodyの所見を示す原因としては以下の4つが考えられる。
- 検体の中に存在している非特異的なIgMがプローブとして使われるHBcAgペプチドと結合することによって偽陽性となる。
- HBV感染後、HBs抗原の消失とHBs抗体の出現のギャップが数週間、もしくはそれ以上となることがあり、HBc抗体は感染後最も早くから出現する抗体(HBs抗原出現から1-2週間以内)なので、いわゆる”window period”においてはIsolated HBc Antibodyの所見がみられることがある。その場合、IgM anti-HBcが急性の感染を示す唯一の血清マーカーとなる。
- HBV感染の何年もたって、HBs抗体が衰退して検出できるレベルを下回り、HBc抗体のみ陽性となる場合。このケースはHBV DNA陰性で、HBVとHIVまたはHCVとの共感染がよく報告されている。 [2]
- HBVをアクティブに複製しているが、HBs抗原が検出できるレベルを下回っている場合。稀なケースで、HBc抗体のみ陽性であることがHBVに感染していることを示すマーカーとなる。
臨床的なアプローチとしては、まずリスクファクターのない患者は偽陽性を考え再検査。リスクファクターのある患者では、HBVに対し非免疫と考え3コースのワクチン接種。そして再検査でも同様にIsolated anti-HBcの所見を示す場合は、上記の3.のケースを疑う。アミノトランスフェラーゼの著明な増加と最近のHBV感染を示す病歴がある場合は、上記の2.のケースを疑う。診断を確定するにはHBV DNAレベルを測る必要がある。稀に、説明のつかない持続的なアミノトランスフェラーゼの上昇を呈する患者には4.のケースを疑い、HBV DNAをチェックすべきで、陽性であれば慢性B型肝炎でHBsAgがNegativeの異型と考える。このケースの患者では、免疫抑制剤を投与する場合や、免疫不全に陥った場合にHBVが再燃し劇症肝炎にいたる可能性があるので、HBV DNAの値をフォローし、HBVの再活性化を抑える治療を行うことが必要である。
isolated anti-HBcの患者が感染性をもつかという問いには明確な答えがでていないが、isolated anti-HBcのドナーの腎臓をレシピエントに移植する際、HBV感染のリスクはなく、輸血や、肝移植などのかなりの量のウイルスが伝染するといった状況を除けば、HBV感染のリスクは非常に低いと報告されている。[3]
References
[1] Harrison's Principles of Internal Medicine, 18th Edition
[2] Alhababi F, et al. The significance of anti-HBc only in the clinical virology laboratory. J Clin Virol. 2003;27:162-9
[3]Mutimer D, et al. Positive suggestions about the anti HBc positive donor, Gut 2001;50:7-8
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