医療は文脈依存的で、周りの状況に応じて「正しさ」のあり方は変わる。呼吸不全を起こしたボツリヌス症のオーセンティックな治療は人工呼吸器による呼吸管理である。バイオテロで大量患者が出た時は、人工呼吸器が足りないばあい、首の後にタオルを置いて「間に合わせ」の治療をする。前者のシチュエーションにおいて後者のオプションを取るのは不適切な医療である。「そういうこと」なのである。
さて、風疹ワクチンが品不足になり、MRワクチンも品不足になる予測が立てられている。厚労省の「協力依頼」は正直何をどうすればよいのか分からないので、具体的にできることを提言したい。
実は、僕自身勉強不足で知らなかったのだが、風疹ワクチンは1回でも十分な免疫を獲得できる。プロトキンにもそう書いてあり、データが表にまとめられている。CDCのピンクブックにも、
In clinical trials, 95% or more of vaccinees aged 12 months and older developed serologic evidence of rubella immunity after a single dose. More than 90% of vaccinated persons have protection against both clinical rubella and viremia for at least 15 years. Follow-up studies indicate that one dose of vaccine confers long-term, probably lifelong, protection. Seroconversion rates are similar for single-antigen rubella vaccine, MMR, and MMRV.
とある。もっとも、これはRA27/3のデータで、日本の松浦株ではないので、そこは問題だが。
麻疹のばあい、「通常の」医療ではMRは2回打ちが適切だ。しかし、その麻疹ですら、1回打ちの免疫原性はかなり高い。
Measles antibodies develop in approximately 95% of children vaccinated at 12 months of age and 98% of children vaccinated at 15 months of age.
だから、定期接種の対象者である小児には現行通りMRは2回打ちが妥当であろう。しかし、「風疹から守るため」MRを打つ成人であれば、1回打ちでも妥当である。一般に予防接種の接種間隔は伸ばしても効果に支障はないとされるから、必要なら供給が十分になった時期に2回めを打てば良い。
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