注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
結核性髄膜炎の診断について
中枢神経系結核の診断は難しい。結核性髄膜炎は全身性の結核感染症の結果として生じる場合もあるが、多くの場合単独に髄膜炎として発症する。亜急性の経過、髄液中の白血球単球分画の増加、抗菌薬や抗ウイルス薬不応性の髄膜炎、結核の既往歴、感染性結核患者との濃厚な接触歴などがある患者に対して結核を疑うことは、治療を迅速に開始するためにも不可欠である。
結核性髄膜炎の脳脊髄液検査においては、蛋白上昇、糖低下、単球増加が典型的に見られる。蛋白含有量は多くの場合100~500 mg/dL、糖は患者の80 %で45 mg/dL未満、細胞数は通常100~500 /μL1)である。髄液白血球分画は、通常リンパ球優位の所見であるが、病初期にはしばしば好中球優位となることもある。結核性髄膜炎の患者の中で、髄液の遠心沈査において抗酸菌が鏡検で確認できたことにより診断されるのは初回の髄液検査では37 %1)である。ただし、繰り返し腰椎穿刺を行うと抗酸菌陽性率は高くなり、4回繰り返すことで87 %1)に増加する。髄液培養では、臨床的に診断された結核性髄膜炎の患者の中で、71 %2)が結核菌陽性となる。結核菌に対し髄液PCR法による核酸増幅検査の感度・特異度は報告により様々であったが、メタアナリシスの結果、感度56 %、特異度98 %3)とする結果が得られている。結核性髄膜炎を疑ったときは、検査結果が陰性であった場合でも、他の原因が特定されるまで結核性髄膜炎の診断を除外したり治療継続の必要性を排除したりすることはできない。
結核性髄膜炎における髄液中のADA検査については、ADAが1~4 U/Lで感度93 %、特異度80 %4)、ADAが4~8 U/Lは十分な感度・特異度を示すデータがなく、ADAが8 U/L以上で感度59 %、特異度96 %4)である。ただし、どのカットオフ値でも細菌性髄膜炎と結核性髄膜炎を区別することはできなかったため、細菌性髄膜炎が除外できた症例において髄液ADAを評価することで結核性髄膜炎の診断に役立つとされている。
画像検査(CTやMRI)では水頭症、脳梗塞、脳底髄膜の増強などが見られるが、結核性髄膜炎として疾病特徴的なものはない。
参考文献
1) UpToDate 「Central nervous system tuberculosis」
2) Improving the bacteriological diagnosis of tuberculous meningitis. J Clin Microbiol. 2004;42(1):378.
3) Diagnostic accuracy of nucleic acid amplification tests for tuberculous meningitis: a systematic review and meta-analysis. Lancet Infect Dis 2003; 3:633.
4) Adenosine deaminase and tuberculous meningitis—A systematic review with meta-analysis. Scand J Infect Dis (2010) vol. 42 (3) pp. 198-207.
5) ハリソン内科学 第4版 pp.1173 pp.1175-1176
6) レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 pp.435-436
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