明日は神戸感染症ベーシックセミナーでしゃべります。場所は中央市民病院。時間は朝9時。タイトルは「21世紀における感染症診療と兵庫県における失敗のパターン」。我ながらすごいタイトルですね。
それはそうと、最近のIEレビューのレビューです。
細かいところが結構役に立ちます。
Infective endocarditis (感染性心内膜炎)
NEJM 2013;368:1425-33
・年間発生率は10万あたり3-9(先進国)
・男女比は2:1
・ハイリスクは人工弁、心内デバイス、未治療チアノーゼあり先天性心疾患、心内膜炎の既往
・50%は弁疾患の既往なし
・透析、糖尿病、HIVもリスク
・アメリカでは3分の1は医療関連
・75-79歳で一番多い。
・80%はレンサ球菌やブドウ球菌。10%は培養陰性。抗菌薬曝露、ブルセラが多い。
・他にもCoxiella(Q fever), HACEK(Haemophilus, Aggregatibacter(以前のActinobacillus)、Cardiobacterium, Eikinella, Kingella)、Tropheryma whipplei
・内膜障害、ジェット病変、慢性炎症が基本的な病態だが、細胞内寄生のC. burnettiやT. whippeliiでは説明できない。(あ、NEJMでもスペルミスってあるんだ、、、)
・病院内死亡率15-22%、5年死亡率40%。人工弁、ブドウ球菌だと死亡率高い。S. aureus, 心不全、脳血管障害、塞栓、医療関連心内膜炎が独立危険因子
・診断はDukeの基準で。感度特異度80%以上。
・新規の、あるいは増悪する心雑音はそれぞれ48%, 20% のみで認められる。血尿が25%、脾腫が11%、Splinter hemorrhageが8%、janeway's lesionsが5%、Roth spotが5%、結膜出血が5%。炎症マーカー(赤沈、CRP)上昇は3分の2のみ!、白血球上昇と貧血は半数で。
・中枢神経合併症は15-20%で。MRIで80%に異常が。無症候性の塞栓も多い。Mycotic aneurysmが5%に(古いデータ)。最近はもっと多い。
・血培3セットで90%は陽性。
・TEEはTTEが陰性ならやる。両者の組み合わせでvegetationは90%で見つかる。逆に言えば1割では見つからない。エコーは、繰り返すと見つかることも。
・治療の推奨は、著者がフランス人だから(?)ヨーロッパのガイドラインを引用。
http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMcp1206782/suppl_file/nejmcp1206782_appendix.pdf
・native valveでは、治療期間は最低2週間(ペニシリン感受性レンサ球菌でアミノグリコシドと組み合わせて)0、腸球菌では6週間。人工弁では通常6習慣。レジメンはnative valveと基本的に同じだが、ブドウ球菌ではリファンピンとゲンタマイシン加える。
・弁置換術を行われた患者の治療はnative valveと同じで、人工弁の治療ではない。治療開始時期は適切な抗菌薬開始日からで、手術日をデイワンとはしない。弁培養が陽性の時のみ、手術日をデイ1と数える。
・腸球菌のIEではアミノグリコシド加えて6週間(感受性あれば)。ただし、AG15日でも81%で治癒したというデータも。
・ゲンタマイシンを分割で行くか、1日1回で行くかは今も揉めてる。
・E. faecalisではセフトリアキソンの追加がいい、、、かも。
・native valveではブドウ球菌のIEにはゲンタマイシンはもはや推奨されない。
・MRSAのIEではバンコマイシンの他、ダプトマイシン8-10mg/kg/dayも
・手術例は増えている。50%に。
・緊急手術が必要なのは、重度大動脈弁逆流や閉塞で難治性肺水腫を伴うもの、心原性ショックに至るもの。fistulaを作り、難治性肺水腫、心原性ショックに至っているもの。
・可及的オペは、重度大動脈逆流や閉塞、持続する心不全など。コントロールのつかない感染(膿瘍、動脈瘤、fistula、大きくなる疣贅、人工弁の離脱など)、解熱しない、血培切れない、10mm以上の大きな疣贅で治療してるのに塞栓のエピソード、心不全、持続感染など。なにもないけど15mm以上の疣贅。
・待機オペ。内科的治療に反応する心不全のあるもの。真菌、多剤耐性菌(緑膿菌など)
・大きな疣贅のある左側IEで48時間以内にオペをするとcomposite outcomeめちゃ下がり(3% vs 23%)。ただし、患者は若かったので一般化できるかは不明。
・経口抗凝固薬は出血のリスクを増すため、すでに飲んでいる人は2週間ヘパリンで置換。アスピリンは推奨されないが、すでに飲んでいる人は飲み続けてOK。
・英国では、もう予防的抗菌薬は「いかなる理由でも」推奨されない。歯と皮膚の衛生が大事。
よく分からないこと(areas of uncertainty)
いつも思うが、このセクションがあるのがNEJMの誠実な所。日本の医学誌もこういうセクションを持ってほしい。
・治療期間は未だよくわからん。
・シプロ・リファンピンのスタディーはあるが、基本IEは点滴治療
・手術のタイミングもまだ不明。
・頭の画像を誰に撮るかも不明(日本的にはセファゾリンの使用法が不明、、、MRIで異常があるときなど)。
コメント
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