厚労省から報告依頼が来て、「どうしましょう」といろいろな人から相談を受けている。
厚労省的には、このような文書を作らざるをえないのである。ただ、現場は全然慌てる必要はない。
所詮、インフルエンザである。急性呼吸器感染症だ。普段やっていることをそのままやるだけなのである。
問題は、普段、どうやっているか、だ。普段の診療がいい加減だと、いざというときにもちゃんと診療できない。
厚労省の届出基準はあくまで「方便」であり、科学的な根拠があるわけではない。熱が37.9℃だからといってH7N9の可能性が消えるわけではない(当たり前だ)。単に、こういう基準を作っておかないと、「基準を作れ」と文句をいう医者がいるから、しかたなく作っただけだ(たぶん)。診療現場の判断基準を会議室の官僚に作らせようなんて、現場のプロとしては恥ずかしい限りなのだけど、そこには気が付かない医者が多い。
急性の発熱患者でシックコンタクト、アニマルコンタクト、旅行歴をちゃんと聞く習慣があれば、全然悩むことはないのである。トイレに行って、トイレットペーパーを使うように、こういうことは頭で考えなくても日々できていないといけないのである。普段、そういうことはほったらかしで、CRPばかり測ったり、適当にフロモックスやメイアクトを出しているからダメなのである。だいたい、「中国」のことしか考えていないと、マラリアは見逃すだろうし、中東のコロナウイルス(なぜかこちらはほったらかし)は見逃すだろうし、、、、単一のウイルスを狙って患者を診るなんて無理なんだ。ちゃんと総合的に患者を診て、その先にH7N9は見つかるのである。
最悪なのは、「厚労省に文句を言われないか」「マスメディアに文句を言われないか」と批判をおそれて形式的な対策をとる病院である。目線の方向が間違っている。あくまで大事なのは患者の診療であり、病院スタッフの安全であり、感染対策の妥当性である。いやしくも感染管理の責任者や病院長なら、批判されることなんて恐れてはならない。批判されるのがいやなら、感染症関係のこの仕事をする資格はない(マジで)。医者も、(中央、地方)行政も、この点は同じである。
繰り返す。インフルエンザA(H7N9)対策なんて簡単だ。少しも難しくない、考え方は。難しいと考えるのならば、普段の日常の外来診療がうまくできていないのである。
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