こりゃ、難しいや。久しぶりにうなってしまった展開。think inside the boxって「型通りに考える」、って意味なんですね。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcps0901467
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こりゃ、難しいや。久しぶりにうなってしまった展開。think inside the boxって「型通りに考える」、って意味なんですね。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcps0901467
投稿情報: 09:21 カテゴリー: clinical problem solving | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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論文の査読については、すでに書いた。
http://app.f.m-cocolog.jp/t/typecast/1014363/1038674/61357585
最近思うのだが、日本人の査読と他の国のレフリーの査読は微妙に違う。
日本人の査読者は内容よりも形式にこだわる傾向にある。「投稿規定によるとこれは間違っている」みたいな。まあ、それは妥当なコメントなんだけど、なんだかなあ、と思うこともある。日本人以外の査読者は、内容の妥当性、主張の妥当性、データの吟味などに突っ込んでくることが多い。日本人だと、「○○の字が間違っている」的な形式主義に陥っていることが多い。以下のサイトにもあるが、そういうのは一番どうでもよいことなんだけどね。まあ、会議なんかでも日本の場合、内容よりも形式が議論の主体になることは多いですね。時間の無駄だから、そういうのは事務方に任せて本質的な議論をしようよ。
http://www.ehow.com/how_5942858_referee-scientific-article.html
さらに、「普通はこうは書かない」という指摘がある。それが妥当な指摘のこともあれば「俺はこうは書かなかった。そう教わらなかった」という私的な経験がベースになっていることもある。特に、症例報告。日本の症例報告はドメスティックな風習があるから(経過表の書き方とか)必ずしもそれがいつでもどこでもアプライできるわけではない。「俺はこうしていない」は本当に妥当な指摘か、査読者はもう少し考えてもよいのではないか。
あと、英語論文の時、日本の学会では日本語でのレフリングを認めていることがある。その是非はおいておいて、「英語が間違っている」と「日本語で」指摘するのはマナー違反なので止めてほしい。英語がつたないと他人に指摘するくらいなら、自分も英語でレフリングすべきだ。それができないのなら、他人の英語を四の五の言う資格はない。
レフリーはたいてい、匿名である。厳しいレフリングはよいと思うが、あまりに礼を欠いたコメントは厳に慎みたい。自分が顔と実名を出しても、そんなに失礼なコメントが出来るかを考えて、コメントすべきだ。匿名コメントってやっぱり無礼なコメントが増えますね、どこでも。
投稿情報: 21:02 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3218.html
昨日、クローズアップ現代で脱法ハーブが特集されていた。化学物質の側鎖をちょい変えて取り締まりを逃れるというやり方で、どんどん「脱法」するハーブが増えていく。規制をかけようとしても既存のやり方だと、実験や会議が煩瑣で何千とある(そしてこれからも増え続ける)化学物質を有効に取り締まることは不可能だ。
http://herbwiki.net/%E5%90%88%E6%B3%95%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%96%E8%A6%8F%E5%88%B6%E7%8A%B6%E6%B3%81
というわけで、側鎖に関係なく一定の構造式「そのもの」を規制する包括規制や、他国の規制状況をそのまま国内にリンクする国際的な規制のコンセンサスが必要になる。常識的に考えて、イギリス人とかアメリカ人に幻覚や見当識障害を起こす化学物質が日本人に何も起こさないと考えるのは極めて不自然だし、そのような作用を起こさない物質であれば「脱法ハーブとしてのレゾンデートル」を失うわけで市場には出ず、したがって社会問題にはなりにくい。
構造式を共有していても医薬品として(あるいはその他の理由として)役に立つという反論はあろう。であれば、そちらを「安全性の審査」にかければよい。大ざっぱに網を張って、例外をピックアップするやり方だ。そちらにおいて、文献審査、実験による検証、そして会議による(安全性、有効性の)確認を取れば、脱法ハーブの取り締まりと、取り締まり過ぎによる弊害のバランスがとれる。
同じ発想を逆転させてみよう。海外で使われている新薬も、「日本人にだけ効果がない」とか「意外な副作用が多い」可能性は否定できない。否定はできないが、そのような原理主義的安全確認主義はあまりリーズナブルではないし(理路は上に示したとおり)、ドラッグラグの大きな原因となる。とくに長年の実績がある抗菌薬などは海外の承認をもって日本でも承認する拡大型の公知申請が望ましい。そして、市販後調査で問題懸念を示すデータが見つかれば、そこで「例外」として文献審査、実験による検証、さらに会議を行えばよいのだ。
僕が知る限り、海外で承認された医薬品が日本人に特異的な副作用や薬効の欠如のために承認されなかったという事例はない(公開されていないので、本当の所は分からない。以前問い合わせたが、「製薬メーカーの守秘義務」とかで公開を拒否されたことがある)。もちろん、日本人特有の薬理作用はある(例、アバカビル、エファビレンツなど)。しかし、それらは承認の後、事後的に分かる薬理作用であり、注意を喚起するものではあるが、医薬品そのものを否定するものではない。どのみち、承認試験時点では気付かれなかった事象である。
そのような(あるとしても)例外的事項のために、社会に役に立つ医薬品をお役所仕事の俎上に載せて頭からブロックしてしまうのは、いかにも目的と手段を混同している。
よく考えてみれば、ぼくらは近年、ますます「例外事項に一般事項を合わせる」基準作りをして失敗している。例外的な不届き者の存在を懸念して、大学では過度な書類やプロシージャーを要求し、それがために多くの教員のパフォーマンスは下がっている。本来は、一般事項を基盤にして、例外は例外事項として扱うのが普通の考え方ではなかろうか。
ぶっちゃけ、例外的な不届き者は寛容にほっておいて、一般的な教員のパフォーマンスを最大化する努力をしたほうが、全体的には得する可能性が高い。でも、そういう全体を俯瞰した発想はほとんどない。不届き者は懲罰せねばいけないという平等主義的なルサンチマンが生じるからだ。でも、不祥事が起きるたびに締めつけが大きくなり、一方向的な規制主義だけが跋扈し、結局は全員が損をする。
一般論と例外を区別し、両者を別に扱えば、脱法ハーブの取り締まりも、医薬品の承認審査も、その他もろもろの面倒くさいプロシージャーも消失する。一律に同じプリンシプルをアプライしようとするから訳が分からなくなるのだ。何が最適解かは、全体像を俯瞰した上で決めたほうがよいと思うけれど、手続きが最優先されるとそれが見えなくなってしまうのだ。
投稿情報: 10:07 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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A Randomized, Placebo-Controlled Trial
of Acupuncture in Patients With Chronic
Obstructive Pulmonary Disease (COPD)
Arch Intern Med.
Published online May 14, 2012.
鍼灸によりCOPDの症状がよくなるという日本発のスタディー。発想が面白い。
Association of Coffee Drinking with Total
and Cause-Specific Mortality
N Engl J Med 2012;366:1891-904.
コーヒー飲んでいる人は死ににくい。コーヒー飲みは、たばこを吸いやすく、赤身の肉を食いやすく、酒を飲みやすいにもかかわらず(どれも死亡のリスク)。カフェインなくても関係ないのか、、、、
Herpes Simplex Virus Lung Infection in Patients
Undergoing Prolonged Mechanical Ventilation
Am J Respir Crit Care Med Vol 175. pp 935–942, 2007
ICUで相関されている人に、HSV気管支肺炎はけっこう多い。さて、どうする?
Three Postpartum Antiretroviral Regimens
to Prevent Intrapartum HIV Infection
N Engl J Med 2012;366:2368-79.
ARTはいっていないHIV陽性妊婦の出産後の新生児の予防投与。ZDVだけでは足りず、2剤だとベター。figure 1が両論併記しているのが興味深い。azt点滴入ってない人が多いのは、、、
投稿情報: 09:40 カテゴリー: journal club | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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注意! これは神戸大学病院医学部6年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだけ寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際には必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jpまで
投稿情報: 08:21 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだけ寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際には必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jpまで
投稿情報: 14:13 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだけ寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際には必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jpまで
日本におけるHIV患者の疫学的特徴
<世界のHIV患者の動向>
2010年の世界の総HIV陽性者数は推定3400万人で、2002年当時(推定2950万人)と比べる増加している。これは依然として多数の人がHIVに新たに感染していること、および、エイズよる死亡を減らす抗レトロウイルス治療大きく普及したことを反映している。とりわけ近年は治療拡大の影響が大きい。HIVの新規感染者数は減少傾向にあり、世界のHIV陽性者人口の68%を占めているサハラ以南のアフリカでは、その傾向がとりわけ顕著である。2010年の年間新規感染者数は世界で推定270万人であり、2001年(推定310万人)と比べると13%、新規感染のピークだった1997年(推定340万人)と比べると21%減少している。(①Progress report 2011: Global HIV/AIDS response)
<日本のHIV患者の動向>
日本におけるHIVの新規感染者数は、最近5年間で5360件の報告がありHIV感染者数の累計の39.1%を占めており、2000年と比べると2.3倍の増加を認める(図1)。2011年に報告された新規HIV患者を感染経路別にみると、同性間の性的接触が68.4%(722件のうち男性同性間の性的接触は686件)、異性間の性的接触が19.5%、静注薬物使用によるものが0.4%、その他・不明が11.7%となっている。特に増加が顕著である男性同性間の性的接触の占める割合と数は2000年と比べて増加している(2000年-2010年、47%,217件-68%,686件)(図2)(②API-NET エイズ予防情報ネット)。アジア諸国においてもMSM(Man who have sex with man)におけるHIVの発症が増加しているが、その割合は8%-32%である(①)。このことを考慮にいれると、日本におけるMSMの増加は特徴的であると考える。また、日本と同じくHIV感染経路として男性同性間の性的接触が61%と高い割合を示すアメリカも、2000年と比べると、その割合と数は増加(2000-2010、42%,10,519件-61%,29,328件)(③Centers for Disease Control and Prevention)しており、日本と同様の特徴を有する。
<対策案>
(1)コンドームを使用しない肛門性交におけるHIV感染のriskを、教育の場(小学校、中学校、高校)で教えるべきであると考える。これは性行為年齢の低下を考えると妥当であると思う。
(2) すべてのMSMに、少なくとも年に一度HIVの検査を受けること、また性的に活発なMSMには、その間隔を3〜6ヶ月おきにすること(③)(④up to date: patient information ;Testing for HIV <Beyond the Basics>)
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(3)MSMのHIV感染に暴露する前の予防として、テノホビル/エムトリシタビンの投与を行う(Grant RM, et al. 2010)。
<参考文献>
① Progress report 2011: Global HIV/AIDS response
http://www.who.int/hiv/pub/progress_report2011/en/index.html
② API-NET エイズ予防情報ネットhttp://api-net.jfap.or.jp/status/2011/11nenpo/h23gaiyo.pdf
③ Centers for Disease Control and Prevention
http://www.cdc.gov/hiv/topics/surveillance/resources/reports/index.htm
④ John G Bartlett, et al. up to date: patient information ;Testing for HIV <Beyond the Basics>
⑤ Grant RM, Lama JR, Anderson PL, et al. Pre-exposure chemoprophylaxis for HIV prevention in men who have sex with men.N engl J Med 2010;363:2587
投稿情報: 14:10 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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日本住血吸虫について
<概要>
住血吸虫症は血管内に寄生する住血吸虫によりおこる代表的な熱帯感染症である。日本住血吸虫は、アジアに分布している。過去、日本では甲府盆地、広島県片山地方、筑後川流域などに広く分布していた。現在、住血吸虫症としては世界で2億人以上の人がかかっており、毎年20万人以上の人が亡くなっていると推定されている。日本では限定された流行地に灌漑用水路をすべてコンクリート化することでミヤイリガイをほぼ撲滅することに成功し、1977年以降国内感染は見られなくなり1996年に正式に流行根絶が宣言された。
<生活環>
人への感染はセルカリアの正常皮膚への侵入によって成立する。セルカリアは中間宿主のミヤイリガイから遊出する。皮下に侵入すると次の発育段階であるシストソミュラに変化する。2〜4日以内に静脈やリンパ管を経由して移行し、最終的に肝実質に至る。成虫となり、移行して腸間膜静脈に至る。雌雄抱合したまま血管内を移動して末梢血管内で産卵する。虫卵は組織中を通り、腸管内もしくは尿道内に到達し、糞便もしくは尿と共に排泄されるものと、宿主の臓器内にとどまるか、門脈系を介して肝臓およびときに他の部位に運ばれるものがある。虫卵が肝臓に塞栓を形成した場合、周囲の組織を壊死させる。排出された虫卵は淡水中で孵化してミラシジウムを放出し,ミラシジウムはミヤイリガイに侵入する。そこで増殖した後、何千もの自由遊泳性のセルカリアが放出される。
<臨床症状>
感染初期にはセルカリアが皮膚を通過する際に、湿疹様皮膚病変がみられる。強い掻痒感を伴う湿疹が数日から2 週間程度持続する。主に感染後2~4か月で急性期症状が出現し、発熱、蕁麻疹、好酸球増多、水様便あるいは粘血便、全身倦怠感、体重減少、黄疸などの症状を生じる。この急性期症状を片山熱という。慢性期では、肝腫大が起こり、肝臓間質の増生、実質の萎縮をきたし肝硬変に移行する。その後、門脈血はうっ滞し腹水を生じ腹部は著しく膨満する。虫卵が血管内を移動し脳に定着するとてんかん発作、頭痛、運動麻痺、視力障害などの様々な脳神経症状を引き起こすことがある。
<診断>
確定診断は虫卵を検出することによる。急性期では集卵法で糞便から虫卵を検出による検便、または生検で組織中の虫卵や虫体の断端を確認できる。補助診断として血清を用いた抗体検査も有用であるが、住血吸虫症の場合、血中の特異抗体が長期間陽性で持続するので、感染既往の有無は判定できても駆虫の適応か否かの判断材料にはならないことが多い。日本では撲滅に成功しているため基本的に見ることはない。ただ、問診において東南アジアや中国などの流行地域への渡航歴と、そこでの水への暴露があり、強い痒みが生じた既往があり、発熱など急性期の症状をきたしている場合や、慢性期の肝症状をきたしている場合に、この疾患を疑う。
<治療>
検便や検尿で虫卵が確認された場合には駆虫薬の投与を行う。プラジカンテルを40 mg/kg/日で2日間投与することでほぼ完全な駆虫効果が得られる。リファンピシン服用患者には禁忌なので注意する。慢性病変には対症療法をおこなう。
<参考文献>
ハリソン内科学 第3版 メディカル サイエンス インターナショナル
寄生虫症薬物治療の手引き2010 改訂第7版 厚生科学研究費補助金政策創薬総合研究事業「輸入熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬を用いた最適な治療法による医療対応の確立に関する研究」班
CDC Parasites – Schistosomiasis Life Cycle http://www.cdc.gov/parasites/schistosomiasis/biology.html
Nature Reviews Microbiology 2, 12-13 (January 2004) L.Chitsulo, P. Loverde , D. Engels
投稿情報: 14:08 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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HIVの治療を始めるタイミング
HIVの治療を始めるタイミングは、未だ多く議論されているが、早期に始めるメリットとしては、CD4陽性T細胞が高いうちから治療をした方が長期予後が良いという研究があることである。デメリットとしては、長期に渡る服薬から起こる問題が挙げられる。長期に渡る服薬によって、薬に対する耐性が早期に出来てしまうこと、将来の薬の選択の幅が狭まってしまうこと、未知の副作用が将来起こる可能性、服薬遵守が難しくなることなどが挙げられる。長期に渡る服薬遵守の困難さは問題であり、ウイルスが耐性化する大きな原因になる。
2012年6月現在のNIHの基準を以下に挙げるが、推奨の強さ、根拠の確かさについては次のようなのものである。
推奨の強度:A=強く勧める、B =中程度、C=個々の判断に任せる
根拠の強度:I=無作為化比較試験、 II =長期的な臨床転帰を観測している、適切に計画された非ランダム化試験もしくはコホート研究、III=専門家の意見
<大人の場合>
抗ウイルス療法(ART)は全てのHIV感染者に勧められているが、その推奨の度合は以下のように異なっている。CD4 が350 cells/mm3の場合 :AI、 CD4 が 350 to 500 cells/mm3 の場合:AII、 CD4 が >500 cells/mm3 の場合:BIIIである。
また、以下の条件に当て嵌まる患者には、 CD4の数に関係なくARTの開始が強く勧められる。妊婦:AI 、エイズ指標疾患の既往歴がある:AI、HIV関連腎症がある (HIVAN):AII、 HIVとB型肝炎ウイルス (HBV) の両方に感染している:AIIである。
※性的関係のあるパートナーがいる患者の場合、効果的なARTによってパートナーへの感染の予防ができる。従って、HIVをパートナーに感染させるリスクのある患者にはARTを行うべきである。
<子どもの場合>
近年、大人のARTのガイドラインは変わりつつあるが、子どものガイドラインも大人と相違点があるのか議論が必要である。
12ヶ月未満のすべての乳児に対して、ARTは臨床的、免疫学、ウイルス学的または症状に関係なく推奨されている。抗レトロウイルス薬に感受性のあるHIV既感染の5歳以上の子どもについて、症状が極めて少ないかまったくない場合に、ART開始の指標となるCD4陽性細胞の数は<350 cells/mm3 から<500 cells/mm3に閾値を上げている。CD4が<350 cells/mm3 の場合、治療の開始はとても強く勧められている(AI)が、 CD4陽性細胞が350–500 cells/mm3の子どもの場合、強い根拠があるわけではない。
免疫機能が比較的保たれている(1歳から5歳でCD4陽性細胞 >25%、もしくは 5歳以上でCD4 陽性細胞数>500 cells/mm3)子どもの治療は、症状が極めて少ないかまったくない場合、血漿中のHIV RNA が100,000 copies/mL以上あるならBIIで推奨され、 HIV RNA が100,000 copies/mL 未満ならばCIIIであり、ARTは任意である。
参考文献
http://www.aidsinfo.nih.gov/, HIV essentials p19、N Engl J Med 2006; 355:2283-2296、N Engl J Med 2011; 365:493-505
投稿情報: 14:07 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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