B型肝炎の血液検査はとても難しい。原則として○○、ただし、、の羅列である。学生には難題だったと思うけれど、苦悩しながらまとめてくれました。
急性B型肝炎と慢性B型肝炎は急性から慢性への移行、慢性B型肝炎のフレアーなどがあり、症状の有無によって完全に分けることはできない。しかし、今回のレポートにおいては抗原・抗体測定の意義を明確にするため、発熱・黄疸などの症状から急性B型肝炎を疑った場合と症状がみられない時のスクリーニング検査においてどのように抗原・抗体測定の結果を解釈するかについて述べる。
-
発熱・黄疸などの症状から急性B型肝炎を疑った場合
急性B型肝炎は以下の三種類の抗原・抗体によって診断を行う。
HBs抗原:HBV感染後最初に血清に検出され(8~12週間)、6か月ほどで検出されなくなる。存在すれば急性B型肝炎を示唆するが、ミュータントや検出感度以下であることがあるため陰性でもB型肝炎を否定できない。
HBs抗体:HBVの中和抗体で、HBs抗体の出現によってHBs抗原は消失しB型肝炎の治癒を表す。慢性B型肝炎とは異なり、HBs抗体の存在下でHBs抗原が検出されることはまれである。
IgM-HBc抗体:HBs抗原に1~2週遅れで検出され、HBs抗原・抗体のどちらも検出されないウィンドウピリオドにおいてIgG-HBc抗体とともに唯一のHBV感染の血清マーカーとなる。最近のB型肝炎への感染を示唆し、HBs抗原が感度以下の時は急性B型肝炎の指標となる。
診断の流れとしてはHBs抗原陽性であればその時点で急性B型肝炎の可能性が高い。次にIgM-HBc抗体の陽性・陰性を見る。陽性であれば急性B型肝炎、陰性であれば急性B型肝炎でない可能性が高いが、超急性期のB型肝炎、慢性HBVに他の肝炎が重なったといった可能性も残る。その後IgM-HAV抗体、HCV抗体とHCV-RNAを計測してA型、C型肝炎への罹患をチェックする。
-
症状がみられない時のスクリーニング検査
慢性B型肝炎は以下の五種類の抗原・抗体とDNA測定によって診断と病勢の評価を行う。
HBs抗原:6ヶ月を超えて検出された場合、慢性肝炎を示唆する。
HBs抗体:急性B型肝炎と同様にHBVの中和抗体として働き、B型肝炎の沈静化を表す。慢性B型肝炎の患者では10~20%の割合でHBs抗原に対する反応性が低い低力価のものが検出されることがあり、HBs抗原とHBs抗体が同時に検出されることがある。
IgG-HBc抗体:慢性B型肝炎や鎮静化B型肝炎で認められ、現在または過去の HBV感染を示唆する。
HBe抗原:ウィルス複製の盛んな時期と検出される期間が一致し、感染性の指標となる。
HBe抗体:HBe抗原と交代に検出され(セロコンバージョン)、感染性が低いことを示す。
HBV-DNA:肝臓でのウィルスの複製を反映し、抗ウィルス療法の適応の評価に用いられる。
慢性B型肝炎を疑っての検査及びスクリーニングでは、まず急性の場合と同様にHBs抗原/抗体、IgG-HBc抗体(HBc抗体)を計測する。HBs抗原陽性であれば感染性の評価としてHBe抗原/抗体を計測し、HBV-DNAを抗ウィルス療法の適応の評価に用いる。HBs抗原陰性であれば、HBs抗体、HBc抗体のパターンを判断して、両者が陰性であれば未感染と判断し、HBs抗体陰性HBc抗体が陽性であればHBV-DNA定量を追加して、Occult HBV infection(HBs抗原/抗体陰性・HBV-DNA陽性)の可能性を検討する。HBs抗原陰性HBs抗体が陽性であればB型肝炎は沈静化しているか、ワクチンにより免疫されていると判断できる。
【参照】ハリソン内科学18th chap304・306
Up to date 「Serologic diagnosis of hepatitis B virus infection
日本肝臓学会「免疫抑制・化学療法により発症するB 型肝炎対策
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。