本日、他の3つのプロジェクトとともに、Big Gunプロジェクトが神戸大学病院病院長賞(第一回)を受賞しました。
これは、2009年のパンデミックの時に香港の病院を視察に行って教えてもらった方法論です。
通常の抗菌薬適正使用プロジェクトは、届け出制、許可制など抗菌薬使用前に介入をかけます。しかし、これではまじめに正しく抗菌薬を使用している医師にも負担を強いますからあまりフェアではありませんし、その後(許可した後)の使用が適正になるかどうかも分かりません。
そこで、広域抗菌薬のオーダーから薬剤師さんがデータベースを作り、これを感染制御部、感染症内科のスタッフが週一回集まってカルテを吟味、適正使用がなされているかをチェックするプロジェクトを病院公認のプログラムで、病院長名で行うようにしました(病院長命令なのがポイントで、各部署が勝手にやっているものではないのです)。こうすれば、適正使用している医師には何の負担もなく、抗菌薬使用に改善の余地があるケースのみ電話がかかってきて、改善を促すのです。血液培養2セットが採取されないまま抗菌薬が投与された場合なども、適性検査の「お願い」が入ります。ここ数年で、血液培養2セット率は80%程度まで改善しましたし、カルバペネムの低容量長期療法みたいな不適切使用は激減しました。
できるだけ現場の負担を増さないように、しかし適正な感染症診断、治療ができるように工夫してきました。これは、ひとえにデータベースを作ってきた薬剤師さんや、相手の恫喝や不平にもめげずに丁寧な電話をかけつづけた感染制御部や感染症内科のスタッフの地道な努力があると思います。ぼくなんかは立ち上げを手伝っただけで、毎週のミーティングにも次第に参加できなくなっていましたが(ごめんなさい)、本当に各構成メンバーの努力と辛抱強さが実った賞だと思います。
神戸大学病院の一番よい所は、感染症に関連した部署が対立したり、抜けがけをしたりせず、同じ目標に基づいて協力して感染症対策をやってきたことだと思います。薬剤部、検査部、感染制御部、病院執行部、看護部などが自部署の利益よりも病院や患者、コミュニティー全体の利益を優先させてくれたおかげで、今回のような横断的なプロジェクトが実現しました。神戸市という国際的な都市の醸し出す雰囲気のせいかもしれませんが、このような寛容さは医療においても学問においても教育においても、そして感染症対策においても一番大切な要素だと思います。
今後は、もっともっと現場の感染症診療レベルが上がり、Big Gunが電話を一本もかけなくてよくなるようにさらに改善していきたいです。毎週のように電話がかかってくる○○先生、あなたの行動変容があれば、こっちからは連絡が行かなくなるんですよ!お互いもっと楽になりませんか?
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