厄介な問題に取り組んでもらいました。難しいですよね。
膿瘍疾患の治療期間
膿瘍は限局性の膿の貯留であり,通常は細菌感染により引き起こされる。症状は局所における圧痛、熱感、腫脹、または全身症状がある。治療は排膿がメインであり、抗生物質を必ずしも必要としない。他の疾患や免疫力低下、全身の感染兆候、血液培養で陽性、ドレナージによる治療効果が認められない時はドレナージに加えて全身的抗生物質が適応となる。感染の経路によっては複数の菌が検出されることがあるため、複数の抗生物質を使用することもある。グラム染色,培養,感受性試験の結果から起炎菌の同定をすることが抗生物質を決定する上で役立つ。
抗生物質の使用する際の注意点は、膿瘍のような酸性条件下ではアミノグリコシド系は効果が得られず、基本的に使用しない。脳膿瘍における黄色ブドウ球菌に対する標準治療がないことも問題点として挙げられる。また、脳や脊髄液のBBBといったバリアを通過しやすい抗生物質を使用することが多く、局所への移行性の低いものは使用しないということも気をつけなければならない。ドレナージに加えて抗生物質による治療効果が得られない場合は外科的にアプローチすることがある。
治療期間は感染臓器や起因菌により異なるが、一般に再発予防も含めて数週間単位となり、浅在性のものであれば局所所見から治療効果の判定をするが、深在性の膿瘍では全身状態の評価や検査結果、画像による評価を指標とする。
脳膿瘍を例にとって考えてみる。脳膿瘍は口腔内や中耳、副鼻腔などのような脳周辺の解剖からの直接的な広がりとして、あるいは感染性心内膜炎や肺炎などの遠隔の感染巣から二次的に血行性に生じるが、成因、病態によって起炎菌も異なる。ドレナージによる排膿と抗生物質が標準的な治療となっているが、条件によっては外科的切除も行われる。起炎菌は連鎖球菌や黄色ブドウ球菌が多く、連鎖球菌ではペニシリンGが標準で、加えて嫌気性菌をカバーするためにメトロニダゾール、グラム陰性桿菌に対して第3世代セフェムを用いる。MSSAに対してはナフシリン、オキサシリンを第一選択としているが、日本では非売なため、代替薬であるバンコマイシンが選択される。MRSAもバンコマイシンが選択される。治療期間は静注6‐8週間、経口2‐3カ月が目安となっているが、外科的切除後は3‐4週間というショートコースも考えられている。臨床経過や画像での膿瘍のサイズの変化を治療の効果判定として用い、画像は数ヶ月間フォローをする。
参考文献
Mandell,Douglas,and Bennett’s PRINCIPLES AND PLACTICE OF INFECTIOUS DISEASES p.1965-1978
レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版
Up to date :Treatment and prognosis of brain abscess
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