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腸結核について
結核はMycobacterium tuberculosis群に属する菌によって引き起こされ、主に肺が侵されやすいが患者の約1/3では他臓器も侵される疾患である。今回扱う腸結核はまれであり、誤診されたり診断が遅れたりすることが多い。米国では肺外結核の3.5%を占める。
【感染経路について】
結核菌を含んだ痰を飲み込む・肺からの血行性転移や粟粒結核の血行性転移・近隣臓器からの転移・感染されたミルクや食物の摂取 の4つが挙げられる。このうち前者3つはすでに結核に感染している場合に問題となるため、結核のリスクファクターをもっている患者は腸結核を罹患する可能性が高いといえる。結核のリスクファクターには、環境因子(結核に感染しやすい環境にいる)・免疫不全状態(栄養状態の悪さやHIV・ステロイド内服中など)があり、詳細な問診でこれを見逃さないことが診断の第一歩となる。
【症状について】
右下腹部の腹痛が最多で、85%の患者で認められる。また体重減少が66%、右下腹部のしこりが25%、下痢が20%の患者で認められる。他にも嘔気・嘔吐・黒色便が認められることがある(1)(2)。
ただしこれらは非特異的な症状であるため、症状のみでは診断にたどりつけない。
【鑑別診断】
アクチノマイセス症・アメーバ症・エルシニア症・クローン病・リンフォーマ・小腸/大腸癌・MAC・ベーチェット病・憩室炎
【検査について】
大腸内視鏡は診断に有用な検査といえる。生検の組織検鏡と培養を組み合わせることで、腸結核を疑う80%の症例で診断をつけられる(1)。さらに生検のPCRは通常の培養よりも感度・特違度ともに高く、結果が48時間で出る(2)。また病変部が回腸・盲腸に限局し、十二指腸や上行結腸など他の部位に出現していなければ可能性は高まる。IBD等と誤診して結核に対しステロイドを投与してしまうリスクを考えると、大腸内視鏡は画像検査に比べて侵襲は高いが行うべき検査であるといえる。
画像検査(CT・透視検査。造影検査を含む)ではIBDなど他の腸炎と腸結核を鑑別できないため(3)、大腸内視鏡よりは有用性が低い。また、胸部X線異常所見は腸結核の患者の50%未満にしか認められない(2)。
【治療】
結核の標準的な治療が非常に有効であり、肺結核と同様にリファンピシン・イソニアジド・エダンプトール・ピラジナミドを2ヶ月間、その後イソニアジド・リファンピシンを4ヶ月間の投与を行う(4)。ただし腸に多数の狭窄を認める患者においては抗菌薬治療への反応は悪く、手術が選択されることがある(2)。腸結核の疑いが強い症例で問診・症状・検査を尽くしたにもかかわらず診断がはっきりしない場合には、抗結核薬の投与を始めることが望ましい。抗結核薬を2週間投与しても症状の改善が認められない場合は、開腹手術を考える(2)。
【参考文献】
- World J.Surg.21,492-499,1997 `Abdominal Tuberculosis`
- UpToDate `Tuberculous enteritis` `Epidemiology of tuberculosis`
- Michael D. Iseman `A CLINICIAN’S GUIDE TO TUBERCULOSIS`
- HARRISON’S INTERNAL MEDICINE 17th edition
- Mandell, Douglas, and Bennett’s PRINCIPLES AND PRACTICE OF INFECTIOUS DISEASE 17th edition
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