Herptic Whitlow
提出日:2011年6月24日
単純ヘルペスウィルスHerptic Simplex Virus(HSV)-1/2の感染によって所謂cold soreと呼ばれる口唇ヘルペスや、性器ヘルペスなど皮膚病変が引き起こされる。Herptic whitlowは日本語ではヘルペス瘭疽と呼ばれ、HSVによる口唇/性器ヘルペスの初感染の合併症として発症する。原因としては特に手指の表皮の創傷からや、他の何らかの方法によってウイルスが直接侵入することによるもので、職業上、看護師や歯科衛生士に多い。
また、HIV罹患者ではヘルペス感染率も高く、中でも同性愛のHIV罹患者は90%以上の割合でHSV-2に感染しており、無菌性髄膜炎の原因の1つとなっている。
4~7日の潜伏期を経て初期症状として発熱、倦怠感、頭痛とともに、右上図のような感染部位の炎症を基礎とした突然の水疱、紅斑、圧痛を来す。潰瘍性の病変を来す場合も多い。
症状や患者背景からHSV感染を疑った場合は皮膚病変の水疱、潰瘍底より検体をとり、Tzanck塗抹標本を作製しLight染色、Giemsa染色による多核巨細胞の検出で診断は可能である。他の方法として血清中のHSV抗原の検出、PCRによるHSV-DNAの検出により診断が可能である。
診断上注意を要する疾患として以下の2つが特に挙げられる。
梅毒とHSVの重複感染は少なくなく、それぞれを厳密に鑑別することは困難であるが、梅毒による感染は無痛性のリンパ節腫脹を認める場合が多い。HSV感染は水疱・膿疱性の皮疹を伴う場合があり、その場合は表皮ブドウ球菌などによる化膿性の細菌感染症との鑑別が必要である。
本疾患は通常の口唇/性器ヘルペス同様に、アシクロビルの経口投与で治療可能である。1000mg/dayを7〜10日継続投与が一般的である。HIV感染など免疫不全者の場合はアシクロビル投与量多く設定すること(5mg/kg)が推奨される。
本疾患は特に職業上の危険因子があることから、HSV感染が疑わしい患者に対して接する場合はstandard
precautionを徹底することにより感染リスクを減らすことができる。診断時において、梅毒は眼症状を来すなど患者の生活予後に大きく関与するため、HSVと梅毒の重複感染を念頭に、HSV感染を疑ったら梅毒の鑑別もすることが重要であると考える。
参考文献
Harrison’s principles
of internal medicine 17th edition
Mandell, Douglas and Bennett’s principles and practice of
infections deseases 7th edition
Fitzpatrick’s
Dermatology in general medicine 6th edition
Mary A Albrecht
et al. Treatment of genital herpes simplex virus infection
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