今度は総説のまとめ。こちらもよくがんばりました。ちょびっと間違えているけど、そこはご愛嬌。神戸大の初期研修医のクオリティーは年々よくなっている、、、と実感している。
急性HIV-1感染(New England Journal of Medicine 2011/5/19)
神戸大学病院研修医 濱田佳奈
2009年のアメリカのデータでは、3320万人がHIVに罹患しており、260万人が新しくHIV感染に罹っていることからも、効果的な予防策が必要である。以下にHIV-1の伝染への理解と最近の臨床的な進展を示す。
<HIV-1感染イベント>
HIVに感染した成人のうち、80%はウイルスが粘膜表面に接触して感染しており、20%が経皮的あるいは経静脈的な接触にて感染している。どんなルートから感染してもウイルスおよび宿主の感染マーカーの出現は一様である。暴露されてすぐは粘膜および粘膜下組織でHIVが複製され、この時期は血清中にウイルスが存在しない。(エクリプス期:7~21日)HIV-1RNAが血清中に5コピー/mlで出現すると核酸増殖法でが、50コピー/ml出現すると定量的なクリニカルアッセイ法で感染を検出できる。さらに感度がよいのは4世代テスト(抗原、抗体の両方を検出)。
ウイルスの侵入経路としては膣頚部、陰茎、直腸、口腔、経皮、経静脈、子宮内などがある。アカゲザルによる研究によると、HIVウイルスの最初のターゲットはCD4T細胞とランゲルハンス細胞である。さらに侵入経路にかかわらず、2~3日以内に消化管系のリンパ性網内系(GALT)に集まり、それを経て全身に広がっていく。
<HIV-1に対する先天的な免疫反応>
HIV-1感染の免疫反応の最初の応答は、感染3~5日後に急性期反応(α1-アンチトリプシン、血清アミロイドAの増加)の出現である。HIVウイルス量が急増すると同時に、IFNαやIL-15によって炎症性サイトカインの急上昇、フォスファチジルセリンの血清微粒子の急上昇、感染したCD4T細胞のアポトーシス化がみられる。
サイトカイン、NK細胞は活性化すると抗ウイルス作用を持つ。サイトカインは抗ウイルス反応を補助する働きをするが、サイトカインストームは免疫反応に害を及ぼし、CD4T細胞の数を低下させる。NK細胞はHIVウイルスに感染した細胞を殺す機能がある。
<急性HIV-1感染における後天的免疫反応>
最初にできるHIV抗体はグリコプロテイン41エンベロープに対して生じるが、この抗体はウイルスを無力化せず、ウイルス株を中和するような抗体などは感染してから3カ月以上たたないと生じない。
CD8T細胞もHIV感染と相関しており、パーフォリンを発現して感染細胞を除去する。急性HIV感染でも慢性HIV感染でもCD8T細胞が減少することによってウイルスのコントロールが効かなくなるというスタディもあり、CD8T細胞が急性HIV感染に重要な役割を果たしていることを示唆する。
<急性HIV-1感染の発見>
HIVは臨床的に明らかにHIVであるという所見に乏しいので、症状からHIVを診断することは困難である。よって検査が発見の中心ツールとなる。検査法は以下の通り。
① HIV-1 RNAもしくはp-24抗原の検出
② HIV-RNA検出を含めたスクリーニング法
③ 酵素に関連したimmunosorbent assey
臨床によく用いられているのは③。①は確定診断向き。②はスクリーニング用。
<急性HIV-1感染の社会福祉への結果>
人から人に伝染するときは、HIVのウイルス量が密接に関連している。感染が成立しているものよりも感染初期のほうが伝染力は強い。伝染のツールは性交渉がメインである。
<HIV-1感染の予防>
HIVの予防を行う方法としては、伝染前もしくは伝染直後に行動することである。一つはワクチン接種、もう一つは抗レトロウイルス薬のテノホビルを使用する。後者に関しては、ハイリスクの女性のウイルス暴露前に予防薬としてテノホビルを使用することでHIV発生率が39%減少したり、男性同性愛者がテノホビルとエンテリシタビンの合剤を1日1回服用することによってHIV発生を約44%予防できたりといったような臨床試験も行われている。CDCも推奨レベルは弱いが、男性同性愛者にウイルス暴露前に予防薬を使用するよう推奨している。
<急性HIV-1感染の管理>
医療従事者の急性HIV-1感染に対する責任としては3つあり、検出、2次予防、抗レトロウイルス薬の開始である。検出に関しては4世代テストが急性HIV-1感染に有用。同時に質の良いカウンセリングも重要。2次予防は患者のパートナー検査も必要。抗レトロウイルスは早期投与に意味があり、診断後すぐに治療開始された患者はB細胞の機能が改善するというスタディもある。さらに社会福祉的にも抗レトロウイルス薬の早期投与は正当化されるべき。
<結果>
急性HIV-1感染に早い段階で介入していくことによって個々の患者の今後の健康状態を改善させたり世間に感染が広がりを抑えたりすることができる。最近の研究では急性感染の初めの免疫イベントが解明しつつある。診断におけるツールが充実してきたが、早い段階で最適な治療をしたり、適切な予防策をとったりするにはさらなる研究が必要である。
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