これもよく調べてきました。週二回というハイペースなレポート提出なのですがね、、、
妊婦健診で重要な感染症
梅毒
梅毒トレポネーマによるSTDの一つで、五類感染症の全数把握対象である。経胎盤感染で先天梅毒を起こしうる。症状の現れる時期によって胎児梅毒(妊娠6ヶ月から早死産)、乳児梅毒(出生後〜3ヶ月までに梅毒症状、特に皮膚・粘膜・内蔵)、晩発性先天梅毒(学童期〜思春期までに梅毒症状、特にハッチンソン三徴候や中枢神経梅毒)に分けられる。ペニシリンGで治療する(テトラサイクリン系は胎盤を通過して胎児の骨・歯に蓄積し、母乳中にも排泄されるので禁忌)。中国では経済と性風俗産業の発展に伴い、近年梅毒患者数が激増している(2008年で患者数25万7000人、5万人/年のペースで増加、先天性梅毒は9480人)(①)。
・B型肝炎ウイルス
HBe抗原陽性妊婦の児はハイリスクであり、予防対策が行われないと85%はキャリアとなる。陰性妊婦の児はほぼキャリアとなることはないが、劇症肝炎が起こることがある。よって、母の抗原陽性・陰性に関わらず予防対策(HBs抗原・抗体検査、HBIG筋注、HBワクチン皮下注)を行う。しかし、キャリア化児の約 3割がHBIG・HBワクチン併用予防法からドロップアウトしていたことが判明した(②)。対策しても5%の児はキャリアとなる。
・風疹
妊娠初期に妊婦が風疹に初感染すると、経胎盤的に胎児にも感染し、先天性風疹症候群CRS(先天性心疾患、白内障、難聴)が発症することがある。感染が妊娠の早期であるほど胎児への感染率・CRS発症率は高い(感染率は妊娠10週までが90%、16週で40%、20週以降ではCRSは起こらない)。また、CRSの95%は初感染、5%が再感染なので、妊娠初期の風疹初感染を予防・早期診断・治療する事が重要である。日本では2006年からMRワクチン2回接種になっているが、抗体陰性またはHI抗体≦16倍なら産褥退院時または1ヶ月検診時にワクチンを接種する(授乳してもよい)。
・C型肝炎ウイルス
母子感染率は10%弱で、予防法はまだない。
・ヒト免疫不全ウイルス
母子感染の経路は経胎盤、産道、母乳の3つであり、約70%は分娩時周辺に起こるとされる。無治療では25〜30%の母子感染率がある。早期の治療開始が必要なためスクリーニングは妊娠初期に行う。しかし、スクリーニング陽性率は0.1%(82/82290)だが、確認検査陽性率は0.0085%(7/82290)と偽陽性率が非常に高い(③)。診断がつけば、妊娠14週以降からジドブジン(多剤併用)療法を行う。分娩時の子宮収縮によりウイルスが胎児側に流入しやすくなるので、破水・陣痛発来前に帝王切開する。新生児は出生後8〜12時間までにジドブジン経口投与(点滴用、シロップは国内未承認)を開始し、6週まで続ける。母乳は禁止する。
・トキソプラズマ
妊婦が初感染を起こした場合、40%が胎児感染を、さらにその40%が先天性トキソプラズマ症(水頭症、脈絡網膜炎、頭蓋内石灰化など)を発症する。妊娠中の初感染率は0.5%以下と低いので全例にスクリーニングを行うか意見が分かれるが、垂直感染を予防できるので行う施設が多い。妊婦初感染で胎児感染に至っていなければアセチルスピラマイシンを、胎児感染していればピリメタミンとサルファ剤の合剤を使うが、保険適応外である。
・成人T細胞白血病ウイルス
母がHTLV−1キャリアなら、10〜30%で母子感染が起こる。しかし、感染の主な経路は母乳なので人工栄養により予防可能である(ただし2〜6%には感染)。
クラミジア
最も頻度の高いSTDで特に若年女性に増加している。無症状の保菌者が多数存在するため、早期検診・検査が重要である。妊婦のクラミジア感染は約5%にみられ、流早産の原因となることもあるとされる。また、産道感染により新生児結膜炎や新生児肺炎を発症させる。近年、抗原陽性妊婦に対する抗菌薬投与で母子感染は減少している。
参考文献
産婦人科診療指針2版 中外医学社
①Joseph D. Tucker, M.D., Xiang-Sheng Chen, M.D., Ph.D., and Rosanna W. Peeling, Ph.D., Syphilis and Social Upheaval in China.
The NEW ENGLND JOURNAL of MEDICINE 2010;362:1658-1661
②2004年厚生労働省調査報告(森島恒雄分担班)
③HIV感染妊婦の早期診断と治療および母子感染予防に関する臨床的・疫学的研究(主任研究者:稲葉憲之)
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。