最後はクリプト。1週間でもいろいろ体験できますね。gattii知ってたら、5年生としては上出来です。
クリプトコックス髄膜炎の治療
クリプトコックス症はCryptococcus neoformansによって起こる深在性真菌症だが、最近、より重症で予後不良のC.gattiiが太平洋岸北西部で流行している(①)。とくに脳髄膜炎を起こした場合は致死率が高いため、すばやい対応が必要とされる。
髄液排液開始圧>25cmH2Oの場合
死亡率が上昇することが知られており、腰椎穿刺により早急に減圧を図る。
頻回の減圧が不可能なら脳室腹膜シャントも考慮する。
リスクファクターとして血液悪性腫瘍患者、免疫抑制治療を受けた実質臓器移植レシピエント、ステロイド投与中、進行したHIV感染によるCD4+Tリンパ球<200/μℓの患者が挙げられる(②)。治療法は、これらの免疫学的異常の有無により異なっている。
・免疫学的異常がない場合
AMPH-B (0.5-0.8mg/kg/日 1日1回静注) + 5-FC (25mg/kg/回 1日4回経口)を
発熱が軽快して培養が陰性になるまで(〜6週)
その後FLCZ (200mg/日1日1回経口10週以上)
・免疫学的異常がある場合
HIV感染を伴う患者では積極的治療が必要で、導入療法(真菌感染量を低下させ症状を
軽減させる)と維持療法(臨床症状再発を防止する)の2つを行う。
導入療法
AMPH-B (0.7mg/kg/日 1日1回静注) + 5-FC (25mg/kg/回 1日4回経口)を2週間
その後地固め療法:FLCZ (400mg/日1日1回経口)を髄液培養が無菌となるまで(10週間)
可能ならHARRT開始
維持療法
FLCZ (200mg/日1日1回経口)を10週間または髄液培養が無菌となるまで
ただし、CD4≧100/μℓとなり、全く無症状の状態が6ヶ月以上続くなら中止してよい
(中止する前に腰椎穿刺で髄液の性状を確認する)
AMPH-B(ファンギゾン)
細胞膜のエルゴステロールに結合して作用する。炎症時のAMPH-Bの髄液移行率は非常に悪いとされるが、初期、とくに5-FCとの併用は有効でその後の再発率も下げる(③)。輸入細動脈を収縮させ尿量が減少すること、K・Mg・HCO3-の排泄を増加させることから腎毒性に注意する。腎機能などの問題でAMPH-Bを使用しにくい場合は、リポゾーム製剤(アムビゾーム)にかえる。症状に応じて増減できるが、1日総投与量は5mg/kg(力価)とする。また、AMPH-B投与前に生食液250mℓくらいを点滴静注しておくと腎機能障害が出にくい(④)。
5−FC(アンコチル)
真菌内で5−FUとなり核酸合成を阻害する。他の抗真菌薬と拮抗作用がない利点を持つが、ピーク値80mg/ℓ、トラフ値40mg/ℓを超えると骨髄毒性を招くためモニターが必要である。
FLCZ(ジフルカン)
エルゴステロールを作る酵素を阻害する。髄液移行率が高く、地固め療法に有効である(③)。経口からの吸収率が高く、腸管循環により半減期が長いのでコンプライアンスが良い。一方、P450、CYP2C9、2C19、3A4など様々な薬物相互作用があることに注意する。
参考文献
①サンフォード感染症治療ガイド2008(第38版) pp166-168
②Harrison’s PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 17TH EDITION pp1251-1253
③臨床に直結する感染症診療のエビデンス pp323,324
④レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 pp419,444,445
治療方針については以下の文献を参照した
サンフォード感染症治療ガイド2008(第38版) pp166-168
深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007 pp45-48
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