呼吸のトリビアの書評です。
いきなりアザラシである。なんじゃそりゃ、という感じである。ナキウサギである。もう勘弁してください。
「呼吸のトリビアーレスピ・サイエンス」は実に面白い本である。僕はこういうワケわかんない本が大好きだ。
本書に患者ケアに直接結びつく情報はほとんどない。だからよい。即物的でない、ノーブルな文体。控えめなのか尊大なのかよく分からない蘊蓄。ヒメネズミと地球温暖化の関係?カエルの横隔膜?肋骨?魚のウキブクロと人の肺の関係とは?これでもか、と言わんばかりに次々とくっだらない情報が開陳される。「コウモリの結核は肺のどこの部位に発症するか」なんて命題を読んで僕はひっくり返りそうになった。もう面白すぎである。
ヨーロッパにタバコをもたらしたのは誰だっけ?こういう歴史的トリビアも面白い。こういうのは感染症屋は大好きだ。この質問は、「あの感染症」と、、、あまり種明かしをしてはいけませんね。
座禅と呼吸の関係。源氏物語の「いき」は「息」か「生き」か?データベースでそれを検索すると?って筆者の皆さん、どういう好奇心をされているのですか?まさかとは思いますが、ひょっとしてものすごく暇ですか?
僕らが毎日使っている「アレ」が世界で最初に日本で開発されたときは「ナニ」だった。1980年の「アレ」は「ナニ」だった。ガリレオ、トリチェリ、パスカルである。一つめの「アレ」は分かる。でも、もう一つの「アッチ」は全然知らなかった。そういう意味なのね、「アレ」って。だんだんこの書評もワケわかんなくなってきた。でもみなさん、とにかく本書は読みたくなってきたでしょう?
とりあえず、ある程度はみなさんの購読意欲を買うことはできたと思うが、あんまり「アレ」とか「ナニ」とか続けていると、しまいには怒られそうだ。一個くらいはネタばらしをしても許してもらえるか。タバコにおけるニコチンやタールの含量の測定方法は国際的に決まっている(本書104頁)。一分間にたったの2秒間、35mlのみ吸引したときの量で判定されているそうだ(へえーっ)。こんないい加減な量を援用しちゃって大丈夫なの?
本書を読んでも僕の医者としての力量は一寸たりとも前進していないと思う。でも、それがトリビアのトリビアたる所以だ。本書の価値がそのことで少しも減じたりはしない。もしかしたら、本書を読んで呼吸の魅力に魅せられた人たちが、呼吸器内科に入門するかもしれないしね。
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