10月発行の「医学教育」において、海外の医学生教育の視察報告があります。オランダウオッチャーの岩田としては、オランダのシステムをまず読み、それからドイツやスペインのそれを読むことにしました。
よく言われる日本のメディカルスクール制への提言ですが、あれは18歳で医師という進路を決めるのは早すぎる、それが日本の医師の適性を低めている。という論旨です。しかし、ちょっと考えてみるとこの論考はおかしい。
1.オランダなど、多くの国では高卒後6年制である。ペルーのように8年制の所もあるが。
2.これらの国の医師がとりたてて非倫理的であったり未成熟である、というはなしは聞いたことがない。
3.むしろ、僕の経験や欧州の医師からのコメントだと、メディカルスクール制をとっているアメリカの医師の方が「childish」にみえる。曰く、すぐ金の話をする、すぐ自分の権利ばかり主張する、議論が薄っぺらく、白か黒か、フェアかアンフェアかでしかものを考えない、我慢が出来ない、など。スマートだが、深みがない(例外はたくさんあります。勤勉でない日本人もたくさんいるのと同じように)。
4.大学に長くいると、人がより成熟する、という前提そのものがそもそもおかしい。普通は逆ではないだろうか。
ときに、今回は「視察報告」のわりには情報量が少なくてちょっとがっかりです。制度的な紹介が多くて、こんなのインターネットとメールでいくらでも得られる情報に見えます。実際の医学生や医師とインタビューしたりして、もっと熱い息吹が感じられる報告ならいいのに、わざわざ現地に行くのだったら。
僕の経験では、日本の「視察団」は見学し、説明を受けるだけで質問をしない。問題点を掘り起こそうとしない。表面的な解説で、満足してしまう。そういう傾向にあると思います。アメリカや中国にいたときは、こういう「視察団」のお世話を何度もしたので、、、、でも、どうせ向こうはいいことしか言わないですよ、そういう構造では。
形式ばかりにとらわれて、問題の根っこをつかみ取ろうとしない。これは日本のあらゆるセクションに見られる悪弊です。学校教育から、学び覚えるだけで、考える訓練を受けていないからで、自分の知識構造の作る世界の中で満足してしまっている。「なんでも知っている、なんでも分かっている(つもりの)」秀才ばかりが増えていく。
むしろ、増えるべきは「私には何も分からない、理解できない、納得いかない」と言える人なのに。
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