化学療法学会は、抗菌薬適正使用のセミナーを開いています。そのときの取得単位に混乱がありましたが、それが修正されていました。間違うことは問題ではなく、それを修正すること、情報開示することが大事なのです。化学療法学会は間違いなく質を向上させつつあります。
さて、昨日の教育講演でもお話ししたのですが、質のよいガイドラインは無謬性を主張しません。こんな制限がある、こんなコントロバーシーがある、ここは未解決の問題点だ、という留保条件をきちんと開示しているのが質のよいガイドラインです。「俺の行っていることは正しい、俺のやっていることは間違っていない」と頑なに主張する医者は信用できないのと同じです。
たとえば、日本褥瘡学会は褥瘡ガイドラインを作っています。Mindsにも載っているので、ちゃんと手続きを踏んでいるように一見見えますが、有名なラップ療法については言及がありません。コントロバーシーや未解決の問題を黙殺しているのです。
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0036/0036_ContentsTop.html
もちろん、ある学説をガイドラインが否定するのはかまわないのです。でも、広く認知された事象に対して、黙殺するのはよろしくありません。このことはリスク・コミュニケーションの基本でもあります。
ときに、Mindsに登録されている感染症は急性胆道炎と小児急性中耳炎のみです。まあ、この二つ以外は確かに、、、、あと、胆道感染は英語版のTokyo guidelineと日本語でMindsに登録されているものでは内容が異なり、ダブルスタンダードになっています。こういう阿漕(あこぎ)なやり方もよろしくありません。たとえば、Tokyo guidelineでは抗菌薬の投与量はGoodman and GilmanかSanfordを参照するよう書いているのに、日本語版ではfull doseをつかえ、とは書いてありますが、その内容は添付文書を参照、、、とトーンダウンしているのでした。せっかく英語版を作ったのだから、と私は少し残念に思っています。
さて、今後感染症学会が作るだろう(多分)新型インフルエンザガイドラインは、どこまでその質を担保できるでしょうか。注目です。
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