長い長いガイドラインですが、知識の整理のためにがんばって読みました。うん、すっきりした。
AASLE guidelines on chronic hepatitis B 2007
・世界にはB型肝炎キャリアが3億5千万人いる。
・慢性キャリアの定義は、HBsAgが半年以上陽性の人のこと
・頻度が高い、中程度、低い地域がある。それぞれ人口の8%以上、2−7%、2%以下のこと。
・感染は垂直感染、血液感染、性交渉による。頻度の高い地域では密な接触も感染の原因になる。
・HBVは体外でも長く生き続ける。
・慢性キャリア化しやすいのは垂直感染や免疫抑制者
・スクリーンの対象はハイリスク患者だが、
「スリランカ以外のアジア全部!」とある。はい、日本人全員です。
・スクリーニングはHBsAgおよびAbが通常。HBcAbを使っても良い。
・HBc抗体「だけ」が陽性になる理由は様々。
1.慢性感染
2.治癒後で表面抗体がでていない。
3.偽陽性(よく、日本の教科書にはこのことが書かれていない。例えば、HCV抗体陽性、PCR陰性のときに「既感染」と決めつけてしまう記載が多い。日本の医師は、検査は間違いを犯さないと信じている人が多い、、、、とくに大学病院)。
4.急性期でウインドウピリオド。HBcIgMを測れば分かる。
・酒を飲むと肝硬変が進む。当たり前。キャリアの飲酒は極力避ける。
・キャリアにはカウンセリングが必要。他者への感染をさせない。性行為を行うパートナーにはワクチンが必要。あるいはコンドーム。妊婦では出産時に免疫グロブリンとワクチンを新生児に。95%以上の効果あり。
・医療従事者でe抗原陽性の場合は「曝露をしやすい手技をやらない」とCDCは推奨している。微妙な言い回し。
・ヨーロッパではDNAレベルで医療従事における許容度を決めているらしいが、そのカットオフ値は200-20000/mlとばらばら。
・HBcのみ陽性の肝移植ではなんと感染率75%!移植の場合は抗ウイルス薬を飲んだ方がよい。期間は決まっていないが、6-12ヶ月?肝移植なら生涯か?HBIGは?
・透析患者は毎年HBV✓をしたほうがよい。ワクチン接種後も免疫が下がることが多いから。
・genotypeはAからHまで8種類。地域によって流行が異なる。
・予後が良いのがB?その他のジェノタイプについては不明。Aと
Bではインターフェロンの反応がよく、CとDはいまいち。別のスタディーではAのほうがBよりよかった(NEJM 2005;352:2682-)。経口薬ではとくにそういうデータなし。
・大多数の患者では、感染初期にDNAレベルとe抗原が上がり、減り、そしてe抗体ができる。
・垂直感染ではDNAが高くてもトランスアミラーゼは正常なことが多い。免疫寛容があるためという。
・e抗原の消失は年間8−12%。免疫抑制があるとさらに低い。
・高齢者、ALT高値、ジェノタイプBかCだとe抗原クリアランスの率が高い。
・10-20%のキャリアが慢性肝炎となる。キャリアのフォローは生涯必要。
・毎年0.5%の確率でHBsAgは消える。抗体もたいてい、できる。しかし、そのうち半分は低レベルでDNAを検知できる。HCCもたまにおきる。HBVが体からなくなっていないことも多いのだ。
・肝硬変のリスクは、高齢、ジェノタイプC、DNA高値、アルコール、HCV、HDV,HIV感染で増す。アフラトキシン、喫煙(!)もリスク。
・HCCのリスクは男性、家族歴、高齢、HBe抗体から抗原への逆戻り、肝硬変、ジェノタイプC、コアプロモータ突然変異、HCV共感染(!)である。
・20-50%のHCCは肝硬変がない。
・HCVとの共感染は10-15%。日本ではもう少し低い?
・肝炎は重症化しやすい。肝硬変、HCCの頻度も高い。
・HDV。サテライトウイルス。地中海、南アフリカに多い。HDVが追加で感染すると、慢性化しやすい。BもDも慢性化するのが特徴。
・HIV共感染。HBVのDNAは高値となりやすい。e抗原のセロコンは起きにくい。肝疾患の予後も増悪。IRISにも注意。CMVやマックでも肝機能は増悪。
・s抗原が出ないこともあるので、HIV感染者では「必ず」c抗体も検査すること。
・CD4は200以上あった方がHBVワクチンは効きやすい。
・PCRは大事。DNA低値を治療するのは非現実的かも。根拠は甘いが、20000コピー以上を慢性肝炎と定義している。
・トランスアミラーゼの閾値はALTで。男性は30,女性は19という意見も。
・肝生検は、ALTが高くてDNAが2万以上の時の「オプション」。そして治療。
・ALT高くてDNA2000-20000が続けば、治療。
・ALT正常、DNA2000以下、e抗原陰性、e抗体陽性なら、様子見。
・e抗原陽性、ALT正常なら経過観察
・ALTちょい上がり、e抗原陽性なら、持続する、40歳以上などなら治療。
・超音波「か」AFPが定期的に推奨されている。両方ではない、、、
・治療は、biochemical(BR),virologic(VR),histologic(HR)に決める。
・耐性が出やすいのがラミブジン、出にくいのがエンテカビル、その間がアデホビル。
・多剤併用療法はまだ効くとはわかっていない。
・
・インターフェロンαは限定された患者でないと効かない。
e抗原陽性かつALT高値。ALT正常だと効果は小さい。アジア人でも同様。
e抗原陰性。効果は38-90%。ただし、再発は多い。24ヶ月の治療が推奨か。
・1回治療失敗したら、次の治療も失敗しやすい。
・e抗原陽性の安定した肝硬変には効果あるかも。ChildB,Cではほとんど効果なし。
・長期予後についてはコントラバーシャル。
・皮下で5MU毎日か、10MUを週三回。16-24週の治療がe抗原陽性では一般的。陰性なら最低12ヶ月、24ヶ月という声も。
・たぶん、pegIFNも同様に効果あるか。180mcg週一回。ラミブジンとの併用療法も。
・ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、telbivudineの腎機能低下時の投与量もガイドラインにあり。便利。
・telbivudineはラミブジンと耐性を共有する。耐性は出来やすい。臨床効果は高いのに。
・テノホビルはアデホビルと構造がにている。効果も同様らしい。
・clevudineも長期にわたってウイルスを抑制すると言われる。ラミブジンと同様、YMDDの耐性あり。
・現行の治療はHBVを除去することは出来ない。
・普通のIFNよりpegIFNのほうがいいだろう。
・耐性が出来やすいのでラミブジンやtelbivudineは好まれない。
・ALT正常なら通常治療はしない。
・pegIFN, アデホビル、エンテカビルがファーストチョイス。小児ではIFNかラミブジン。
・耐性ウイルスが出たら、「加える」か、「変える」。
・ただし、ラミブジン耐性でアデホビルを使うなら、「加える」。エンテカビルでは、ラミブジンはエンテカビル耐性を促すので、「やめる」。結構複雑。
・アデホビル耐性では、ラミブジンかエンテカビルを「加える」
・エンテカビル耐性では、アデホビルを用いる。
・肝硬変ではIFNは使わない。アデホビルかエンテカビルのことが多い。
HCV共感染での治療
・推奨なし。データなし。
HDV。
・IFNのみ。ラミブジンは効果なかった。
HIV。
・ラミブジン、エムトリシタビン、テノホビルはHBV,HIV両者に効く。アデホビルは低容量なのでHIV治療には使えない。ただし、耐性もでにくいらしい。エンテカビルはHIVには効かない。telbivudineはHIVには効果がないが、M204I(YMDD)突然変異を誘発するため、使うべきではない。
・IFNはCD4が500以上で推奨されることが多い。e抗原陰性ならアデホビルかエンテカビル、、、、
・HAARTを変えるときにHBV治療を止めないことが大事。フレアの原因に。
・化学療法、免疫抑制の時は予防的にHBV治療をする手もある。
急性肝炎
・重症、劇症肝炎でのみ、ラミブジン、エンテカビルなどを使う。lIFNは禁忌。
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