なでしこジャパンはオリンピック4位。成績も見事ながら内容もすばらしく、ノルウェーやドイツという、10年前ならぼろ負けな相手でも互角かそれ以上に渡り合いました。本当に選手関係者の皆さんはご苦労様でした。
とはいえ、ここが考えどころだと思います。「なでしこジャパン、よくやった」で終わってしまうと次のロンドンでは惨敗してしまいそうです。
というのも、同じような歴史は繰り返されているからです。
身体能力で劣る東アジアの国々で接触プレーの多い球技で勝つのは大変です。そこでテーマになるのはagilityです。素早くボールを動かし、1対1で勝負せず、運動量で勝ちまくって応戦します。これでうまくいったのが2002年の韓国=ヒディングサッカーでしたし、古くは1966年の北朝鮮もそうだったかもしれません。
しかし、ヒディングサッカーが勝てるのは準決勝までなのです。短期決戦のワールドカップやオリンピックでは、過剰な運動量がより所のサッカーでは長持ちしません。準決勝あたりで限界が来ます。3位決定戦ではもろにでます。なでしこジャパンは前半ドイツを圧倒しましたが、後半はスタミナ切れでした。完全にドイツの作戦にはめられた感すら、あります。よく、日本の決定力不足が問題になりますが、へろへろに走り回って疲れ切った選手に決定力があるわけがないのです。走り回って運動量で上回るサッカーを目指す以上、その代償としてやってくる決定力不足は飲み込むしかないのです。ソフトボールの上野投手のような例外的なスーパースターがいれば話は別かもしれませんが、それは偶然のなせる業のような気がします。
さて、なでしこジャパンが次に目指すは「今以上」のサッカーのはずです。だから、agilityをより所にした今の方法論では準決勝以上に進むのは困難です。ヨーロッパ選手権でもあれだけがんばったロシア=ヒディングが負けたのは象徴的です。
そうすると、agilityを大事にする今の方向性は大事にしても、せめて予選リーグでは違う戦い方があるのだと思います。それは、「手を抜くサッカー」です。
優勝を本気で狙う国は予選リーグでは本気を出しません。予選はほどほどに手を抜いて、決勝トーナメントで尻上がりに調子を上げて準決勝、決勝で最高のパフォーマンスを出すのが理想的です。その典型は、例えば1982年ワールドカップのイタリアですし、1986年のアルゼンチンもそうでした。1998年のフランスワールドカップで日本はアルゼンチンと善戦しましたが、それは、アルゼンチンが予選リーグでは手を抜いていたから、という側面はあるのです。
しかし、今回のなでしこは予選リーグから全力投球でした。余裕で逃げるサッカーができなかったからです。おかげで予選では米国とは善戦し、ノルウェーには大勝しましたが、失ったものは少なくなかったと思います。予選におけるサッカーをいかにしたたかに、上手に逃げ抜けるかが、今後のアジアのサッカーのあり方を占うと思います。
1966年を最後に北朝鮮サッカーの活躍の場はありません。2002年に躍進した韓国ですが、お世辞にもサッカー先進国に出世したとは言えません(でも、ManUファンの私はもちろん、パクチソンは大好きです!)。一時の成功におぼれず、次のステージを上手にねらえるか、なでしこジャパンのロンドンに期待したいです。
それにしても、サッカーといい野球といい、男子は惨憺たる状況です、、、、
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