では、どんなときにCRPが役に立つか考えてみましょう。
CRPの上昇、下降は多くの急性感染症で、「ある条件を満たせば」その感染症がよくなっているか、そうでないかの指標になります。
それは、CRPが熱、血圧、意識状態、呼吸状態、あるいは患者の自覚症状や食欲などと連動しているときです。
ポイント
・急性感染症ではcrescendo or decrescendo。良くなるか悪くなるかのどちらかだけ。
・多くの感染症では、(CRPも含めて)全てのパラメター同時に同じ方向に向いて動く。
つまり、CRPが他のパラメターと一緒に動いているとき、そのCRPは患者の評価の役に立つ、ということです。逆に、他のパラメターがよくなっているのにCRPが上昇したままだったり、あるいは他のパラメターが悪いのにCRPがあがらないとき、CRPは臨床的には役に立ちません。
あれ?
そう、賢明な読者の皆さんはお気づきになったでしょう。「他のパラメターと連動しているときのみ」CRPが役に立つのなら、他のパラメターさえみておけば、CRPを測らなくても患者の評価は可能だ、ということです。そして、他のパラメターとCRPが連動していない場合は、CRPを測定しなければCRPの高低は予測できません。ところが、そういうときはCRPは臨床的に有用ではないのです。なんたるジレンマでしょう。
したがって、CRPを測定しなくてもいいときにはCRPは臨床的な予測因子となり、CRPを測定しないとCRP値が予測できないときは、臨床的な予測因子とならない、ということです。え?よく分からない。簡単にいうと、患者を丁寧に診察していればCRPは測らなくていい、ということです。
しかも、この原則には例外があります。例えば、臨床的に改善して、CRPが下がっていても(連動している)、抗菌薬を止めてはいけない場合もあります。例えば、感染性心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、膿瘍といった疾患です。こういった疾患は、場合によっては治療開始数日で患者の臨床症状は改善し、CRPも下がりますが、「決して」抗菌薬を止めてはいけません。
ポイント
・感染性心内膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、膿瘍などでは(たとえドレナージしていても)、CRPの低下をもって抗菌薬を中止してはいけない。
CRPは炎症マーカーで、抗菌薬はばい菌を殺す薬です。抗炎症薬ではありません。炎症と殺菌は多くの急性感染症ではいっしょに動くパラメターですが、上記の疾患ではそうではありません。炎症が治まっても細菌は生きています。清潔な、本来であれば細菌が一匹もいてはいけない場所で、生きています。例え患者がよくなったように見えたとしても油断してはいけません。何週間、何ヶ月、時に1年以上たって、患者は再発してきます。そして、そのときには心臓の弁はぼろぼろになり、椎体はつぶれ、患者の生命予後、QOLはがた落ちになっていることがあります。医師の手落ちで、患者の予後を悪くすることは決して許されることではありません。私は、「CRPが下がった」という理由で黄色ブドウ球菌による心内膜炎、椎体炎、化膿性関節炎に対する抗菌薬が中止になり、患者が死に至ったケースをいくつも知っています。無知は、罪です。
だんだん、暗澹たる気持ちになってきましたね。本当にCRPは役に立つのでしょうか。次回は、実際に病棟でCRPが役に立ったケースを振り返ってみましょう。まれに、CRPは私たちを助けてくれます。そんなケースです。
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