IEの診断基準であるDuke criteriaでは症例を"definite IE", "possible IE", "rejected IE"に分類し、"definite IE", "possible IE"はそれぞれ病理学的criteria、あるいは合致する臨床的criteria(Major criteria /Minor criteria)の組み合わせにより診断する。1994年に提案されたDuke criteria(以下、旧基準)は感度80%を超え、特異度や除外診断の精度についても高い評価を得てきた[3]が、2000年にはその問題点を修正したmodified Duke criteriaが発表された。旧基準からの修正点と根拠をまとめる。
ü "possible IE"の定義を変更
『少なくとも1つのMajor criteriaと1つのMinor criteriaを満たすもの、または少なくとも3つのMinor criteriaを満たすもの』
"possible IE"の項目に含まれる患者に対しては、診断や抗菌薬投与は各臨床医の判断に任される。旧基準では"possible"の範囲が『"definite"とは診断できないが"rejected"にも合致しないもの』と広すぎることが問題点として指摘されていたことから、診断の精度を上げるために変更を加えた。
これに伴い、"rejected IE"には『"possible IE"の定義を満たさないもの』が含まれることとなった。"definite IE"の定義に変更はない。
試験の結果、病理学的にIEが証明された100例での"definite"と"possible"の内訳は変化しなかった。が、旧基準で"possible"と診断される301例のうち50例(17%)が"rejected"に移行していた。このうち45名を追跡調査した結果、20名は2-4週間の治療を受け、25名は無治療または2週間以内の治療を受けた。6ヶ月間で、45名のうち3名が、"definite IE"の診断で再入院となった。
ü Minor criteriaの修正
『心エコーでIEに矛盾しないが、Major criteriaは満たさないもの』を削除
旧基準ではTTEで非特異的な弁膜肥厚があるケースを想定して上記の項目を含んでいたが、Duke大学のデータベースによると実際にこの項目が使用された例は5%程度にとどまり、かつTEEが施行された例では使用されていなかった。TTEで不明瞭な病変はTEEにて確認することが望ましいと考えられたため、削除された。
また、血管イベントの項目をMajor criteriaに変更すべきだという指摘があったため検証を行ったところ、約8%の症例が"possible"から"definite"へと移行した。しかし、脳卒中や血管炎、リケッチア症など数多くの症例が"possible IE"に含まれることとなり、それらに加えて合併症が存在する症例では鑑別が困難となるため、変更には至らなかった。
ü Major criteriaの修正
Staphylococcus aureusの菌血症はその感染源によらずMajor criteriaを満たすものとする
旧基準では市中感染のみMajor criteriaとしていたが、近年の研究やDuke大学データベースを解析した結果、院内感染によっても十分に起こりうることが判明した。また、院内感染のうち半数前後が、カテーテルなどの除去可能な感染源によるものであるというデータもある。したがって、感度を上げるため、院内感染や除去可能な感染源についても、Major criteriaに含めることとした。
『Coxiella burnetii血培陽性または血清IgG検査陽性』を追加
旧基準によるとQ熱血清検査はMinor criteriaに含まれることとなっていた。しかしQ熱におけるIEの20症例中4症例が"possible IE"と診断されたデータがあることから、感度を上げるためMajor criteriaに追加された。
IEが疑われる症例でTEEの施行を推奨する
旧基準ではTTEを重視していたが、現在ではvegetationの発見に関してTEEの感度が優れていることが評価されてきた。Duke criteriaにおけるTEEとTTEの役割を検証したところ、総じてTEEはTTEよりも感度が高く、IEが疑われる("possible"以上の)症例でTEEを利用することの重要性が示唆された。とくに弁周囲膿瘍など複雑なケースや人工弁におけるIEではTEEを最初の検査として使用することを主張している。
小児では、旧基準における"definite IE"の感度81%、modified Duke criteriaでは88%であったとの研究が存在する[5]。とはいえ、modified Duke criteriaの追試験はまだ少ないようであり、最終的な感度・特異度を確認することはできなかった。新たな調査に基づく問題提起が必要と考えられる。
【参考文献】
[1]Clinical Infectious Diseases 30:633–638, 2000.
[2]The American journal of medicine 96, 1994 Mar;96(3):200-9.
[3]UpToDate "Infective endocarditis: Historical and Duke criteria"
[4]UpToDate "Diagnostic approach to infective endocarditis"
[5]Pediatrics2003; 112: e467-e471
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