こういうのは学生のうちに肌に落とし込んでおくのがよいです。
低Na血症のアプローチ
低Na血症は血清Naが135mEq/L未満の状態と定義されており、①高張性、②等張性(偽性)、③低張性低Na血症の3つに分類することができる。①は極端な高血糖、マンニトールなどの浸透圧物質によるもの、②は高脂血症、高蛋白血症などによる測定上の問題であり、臨床的な重要性は低い。そのため、低Na血症を見たらまずは採血上の問題(例:採血時に輸液製剤が混入など)がないかを確認し、血漿浸透圧を測定して①と②の除外を行う。この時、血漿浸透圧<275mOsm/Lであれば③であると判断する。
低張性低Na血症であることがわかれば、まずは尿浸透圧を測定し、治療法が他の病態と大きく異なる水中毒の除外を行う。この時、最大希釈尿(尿浸透圧<100mOsm/kg)の排泄があれば水中毒による低Na血症と判断し、治療として水制限を行う。
水中毒が除外できれば、Vital sign、身体所見、画像所見などで細胞外液量の評価を行い更に鑑別を進めていく。浮腫や胸水、腹水が存在しており細胞外液量が増加していると考えられる場合は相対的にNaが不足するため低Na血症となり、原因としては心不全、腎不全、肝硬変などが挙げられる。
細胞外液量が不変である場合は、ADH分泌増加により水分排泄障害が起きて二次性にNa利尿を来していると考えられ、原因としてはSIADH、甲状腺機能低下症、副腎機能不全などが挙げられる。浮腫を起こすまで細胞外液が増加しないのは、ADHの分泌増加の際、腎集合管においてAQP-2の発現が減弱するためと考えられている。また、SIADHは入院中に発生する低Na血症の原因としては最も多い。
舌の乾燥やツルゴール低下があり、細胞外液量が減少していると考えられる場合の病態としては①腎臓からのNa喪失と、②腎臓以外からのNa喪失に分けることができ、①の原因としては利尿薬、塩類喪失性腎症、低アルドステロン症などが挙げられ、②の原因としては嘔吐、下痢、熱傷などが挙げられる。両者の鑑別には尿中Na濃度が有用であり、尿中Na濃度>20mEq/Lの場合は腎性のNa喪失と考えられる。以下に低張性低Na血症のアプローチのためのアルゴリズムを示す。
治療は低Na血症での重篤な症状(昏睡・痙攣)があるか、急性(48時間未満)か否か、現在も進行しているか否かを念頭に置いて進める。原則は浸透圧性脱髄症候群を防ぐため0.5mEq/L/hの上昇に留めるべきであるが、重篤な症状があり、急性のものは脳浮腫を予防するために3%NaClを3~5mEq/L/hの速度で投与しなければならない(1~2時間おきに血清Naモニタリングを行う)。また、体液量が減少している場合は循環動態の安定化を優先する。
参考文献:ハリソン内科学(メディカルサイエンスインターナショナル社):p282~286、 up to date:causes of hyponatremia
総合診療・感染症マニュアル(医学書院):p256~260
低Na血症の病態生理:dokkyo journal of medical science 38(1) 135~142
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