「骨髄炎を伴う外耳道炎についてどのように治療を行うか」
担当患者が、外耳道癌に対しての化学放射線療法4ヵ月後に外耳道炎を起こした方だった。外耳道炎が頭蓋骨に及ぶと、どのような治療方法があるのかについて調べた。
外耳道炎が頭蓋骨に及ぶ(頭蓋底骨髄炎)場合、悪性外耳道炎(Malignant otitis externa,MOE)と呼ばれることが多い。まずMOEの特徴についてまとめる。MOEは、主にPseudomonas感染によるものが多く、次いでS.aureus感染や、真菌ではAspergillus が多い。また、主として糖尿病患者や易感染者に生じる。進行すると、脳神経を傷害し生命の危険がある。
文献検索を行ったところ、MOEの治療方針については確立されたガイドラインや大規模な比較試験などは見つからなかった。そこで、①頭蓋底骨髄炎についてのレビュー論文と②MOEに対する治療と結果についての後ろ向き研究の論文で調べた。治療方法についてはいずれも以下の3つの方法が示されている。1.抗菌薬投与2.糖尿病のコントロール3.高圧酸素療法である。1.抗菌薬投与については、同定された微生物に基づく抗菌薬投与が推奨されている。頻度としてはPseudomonas aeruginosaが一番多く(②では44%の患者から検出)、次いでS.aureus(②で12%)、Aspergillus flavus(②で8%)という結果である。検出される順位としては他の報告の結果も大きく違わなかった。また、培養結果が陰性(②で32%)ということも少なくない。その場合は、広域抗生剤投与が推奨されており、頻度から考えPseudomonasを確実にカバーできる抗菌薬が望まれている。③によると抗菌薬は、抗緑膿菌ペニシリン系やセファロスポリン系(セフェピム、セフタジジム)が推奨され、場合によってアミノグリコシド、フルオロキノロン系を加えることを考慮し、シプロフロキサシンも使われるということであった。2.糖尿病については、糖尿病による循環障害、血管障害がMOEの病因となりえることから、糖尿病のコントロールはMOE治療において重要な課題であることが示されている。実際に②の調査においてHbA1c<6.0の患者の平均入院日数が26.89日であったのに対し、HbA1c>6.0の患者は33.39日と、糖尿病のコントロールが良好な患者は不良な患者に比べて有意に治療反応が良いことが報告されている。3.高圧酸素療法については、①では、血管新生と骨新生を高めることで有効であると示されていたが、②の調査では高圧酸素療法を行った患者と行わなかった患者の治療成績に有意差がなかったと報告されている。他の論文を検索しても、高圧酸素療法は有効だとするものと有効ではないとするものがあり、有効かどうか分からなかった。治療期間については、①では4∼6週としており、②でも治療期間の平均は31日であり、③ではβラクタム系で4週間、経口投与された場合は3カ月とされている。また、治療効果を評価するのに有用な検査としては、①ではガリウムシンチグラフィとESRが有効とされている。②の調査でも、ESRについては入院時52.76±32.49 (9–108) mm/h、退院時 14.92±1.22 (4–32) mm/hと治療反応性を見るのによい指標だと報告されている。
治療法としては、原因菌に対する抗菌薬治療が第一である。起因菌が同定されない場合は広域抗菌薬投与が推奨され、特に緑膿菌の頻度が高いことに注意すべきである。また、糖尿病がある場合は、治療反応性を向上させるためにコントロールが必要である。治療期間は静脈投与の場合4-6w程度であり、治療反応性を評価するためには、ガリウムシンチグラフィやESRが有用である。
参考文献
- Khan MA, Quadri SAQ,et al: A Comprehensive Review of Skull Base Osteomyelitis: Diagnostic and Therapeutic Challenges among Various Presentations. Asian J Neurosurg.2018 Oct-Dec;13(4):959-970.
- İsa Kaya, Baha Sezgin, Sevinç Eraslan,et al: Malignant Otitis Externa: A Retrospective Analysis and Treatment Outcomes. Turk Arch Otorhinolaryngol. 2018 Jun; 56(2): 106–110.
- Harrison’s prinsiples of internal medicine 20th edition p.211-212,214,1169,1170
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