感染症内科BSLレポート
「なぜバンコマイシンで耳毒性はおこるのか」
<序論>
XXXバンコマイシンによる聴力障害 XXXどうして耳毒性が生じたか疑問に思ったのでこの題にした。
<本論>
バンコマイシンによる蝸牛障害の機序について動物モデルを用いて調べた論文がある。R.A.Tangeらは6か月から12か月のオスのスナネズミ14匹にバンコマイシン(80mg/kg/日)を2週間腹腔内投与した。投与後、アムステルダムとストックホルムの研究所でそれぞれスナネズミの内耳を調べた。結果として、誘発反応性聴力測定での聴力閾値には投与前後での差は認められなかった。また、アムステルダムにおいて走査電子顕微鏡検査で投与後の右内耳を調べたが、蝸牛に内有毛細胞・外有毛細胞の形態学的変化は認められなかった。ストックホルムにおいて顕微解剖で左内耳を調べたが、同様に異常は認められなかった。(1)
<結論>
上記の動物モデル研究ではバンコマイシンによる耳毒性は生じず、機序も判明しなかった。原因としては2つ考えられる。1つ目は対象となったスナネズミの数が14匹と少なかったこと。2つ目はM.D.Andersonらの研究で人におけるバンコマイシンによる耳毒性の発生率は3%と低いことが示されており(2)、スナネズミにおいても人と同様に耳毒性の発生率が低かったことが考えられる。今後さらに研究して機序を明らかにし、耳毒性発症の予防に繋げていく必要がある。
<参考文献>
1)R. A. Tange , H.L. Kieviet I, J. v. Marie , D. Bagger-Sj6biick , and W. Ring : An experimental study of vancomycin-induced cochlear damage : Arch Otorhinolaryngol (1989) 246: 67-70
2)Elting LS,et al:Mississippi mud in the 1990s : risks and outcomes of vancomycin-associated toxicity in general oncology practice.:America Cancer society December 15, 1998 / Volume 83 / Number 12
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