BSL感染症内科レポート
「外傷骨折の手術後におけるSSIのリスク因子は何か」
〈序論〉
手術部位感染(SSI)は、外科治療を行った患者の術後フォローを行っていくうえで最も注意すべき事項の一つであり、そのリスク因子を把握しておくことは重要である。XXXSSIの中でも特に外傷骨折の術後に起きるものに興味を持った。
そこで当レポートでは外傷骨折の手術後のSSIのリスク因子にはどのようなものがあるかを調べた。
〈本論〉
Hang Xuらは2014年7月から2017年12月までの間に、外傷による大腿骨遠位骨折の外科的治療(内部固定術)を行った18歳以上の患者434人を後ろ向きに研究した。434人のうち、SSIを発症した患者は21人(表層SSI 15人、深部SSI 6人)、SSIを発症しなかった患者は413人であった。その結果、開放骨折患者56人のうち6人(10.7%)でSSIが発生しており、最大のリスク因子となっていた(OR:5.63,95%CI[1.76-9.47],p<0.001)。また、それ以外にも、高いBMI(OR:1.17,95%CI[1.03-1.28],p=0.004)、治療期間中の喫煙(OR:3.22,95%CI[1.71-4.68],p<0.001)、手術時間の延長(OR:1.64,95%
CI[1.17-1.99],p=0.024)がSSIのリスク因子であると判明した。1)
〈結論〉
上記の研究より、外傷骨折の手術後のSSIは、開放骨折、高BMI、治療期間中の喫煙、手術時間がリスク因子となることが分かった。SSIの発生を少なくするために、治療開始とともに患者に禁煙を促したり、術前計画をしっかりと行い手術時間の短縮を目指すなどして、リスク因子を取り除くことが重要であると考えられる。また、今回参照した研究は、ステロイド使用下での手術などの稀な症例や、SSIが発症する前に転院してしまった症例などは網羅しきれていないという限定があり、より多様な症例データの蓄積が外傷骨折の術後SSIのリスク因子のさらなる解明に必要である。
【参考文献】
1)Prolonged surgical duration, higher body mass index and current smoking increases risk of surgical site infection after intra‐articular fracture of distal femur:Anz Journal of Surgery Volume89, Issue6 June 2019 Pages 723-728
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